サンゴ分類の話 連載 第3回 サンゴの和名問題(2)「エダミドリイシ/ヒメエダミドリイシ」

今回,サンゴの和名問題として,日本温帯域に特異的に生息している樹枝状の種であるエダミドリイシとヒメエダミドリイシを取り上げる。従来,エダミドリイシの学名はAcropora tumida,ヒメエダミドリイシの学名はAcropora pruinosaとされており,この2種は枝の太さの違いにより識別されていた。しかしながら,タイプ標本の観察の結果,杉原ら(2015)は,日本でこれら2種として認識されてきたものは同一種の形態変異形であり,どちらもA. pruinosaであると判断した。さらに,野村ら(2016)により, A. pruinosaの和名は,従来のヒメエダミドリイシからより古い和名であるエダ...

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Published in日本サンゴ礁学会誌 Vol. 24; no. 1; pp. 9 - 12
Main Authors 横地, 洋之, 深見, 裕伸, 目﨑, 拓真, 野村, 恵一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本サンゴ礁学会 2022
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ISSN1345-1421
1882-5710
DOI10.3755/jcrs.24.9

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Summary:今回,サンゴの和名問題として,日本温帯域に特異的に生息している樹枝状の種であるエダミドリイシとヒメエダミドリイシを取り上げる。従来,エダミドリイシの学名はAcropora tumida,ヒメエダミドリイシの学名はAcropora pruinosaとされており,この2種は枝の太さの違いにより識別されていた。しかしながら,タイプ標本の観察の結果,杉原ら(2015)は,日本でこれら2種として認識されてきたものは同一種の形態変異形であり,どちらもA. pruinosaであると判断した。さらに,野村ら(2016)により, A. pruinosaの和名は,従来のヒメエダミドリイシからより古い和名であるエダミドリイシに変更された。一方,A. tumidaはタイプ標本の観察から群体形がコリンボース状であることが分かり,従来認識されていた太い枝の樹枝状ではないことが判明した。これにより,日本国内でのA. tumidaの実態は不明となったため,和名については未定となっている。現在,これらの変更の周知が不十分であるため,和名および学名の使用で混乱が見られる。そのため,本稿では改めて次の提言を行う:「日本温帯域に特異的に生息している樹枝状のミドリイシ属の種は(枝の太さに関係なく)A. pruinosaであり,和名にはエダミドリイシを用いる。A. tumidaについては国内の実態が不明であり,現在,和名はない。」
ISSN:1345-1421
1882-5710
DOI:10.3755/jcrs.24.9