明治期酒造業固有の帳簿が有する意味と役割-灘酒造家の一次史料を用いて

本稿では,明治期後半日本の主要な租税となる酒税の申告に関わる灘酒造家の一次史料を用いて,当時の酒造業固有の帳簿と記録内容,酒税申告におけるその役割について考察した。具体的には,酒税申告の際に重要となる仕込帳と粕目方帳を中心に,酒造業固有の帳簿に記録された物量計算の内容とその活用方法に着目した。その結果,当時の酒造業固有の帳簿において,各部門単独の管理のために物量計算が行われていただけでなく,酒税算定を裏付けるだけの,主要原料となる米の購入から酒の販売までの酒造業の経営全体を収税官吏からも確認できるように,各帳簿での物量計算が組織化されていたことを指摘する。そして,酒造業固有の帳簿記録から,現在...

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Published in簿記研究 Vol. 7; no. 2; pp. 10 - 20
Main Author 土井, 貴之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本簿記学会 25.12.2024
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ISSN2434-1193
DOI10.32177/jjac.7.2_10

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Summary:本稿では,明治期後半日本の主要な租税となる酒税の申告に関わる灘酒造家の一次史料を用いて,当時の酒造業固有の帳簿と記録内容,酒税申告におけるその役割について考察した。具体的には,酒税申告の際に重要となる仕込帳と粕目方帳を中心に,酒造業固有の帳簿に記録された物量計算の内容とその活用方法に着目した。その結果,当時の酒造業固有の帳簿において,各部門単独の管理のために物量計算が行われていただけでなく,酒税算定を裏付けるだけの,主要原料となる米の購入から酒の販売までの酒造業の経営全体を収税官吏からも確認できるように,各帳簿での物量計算が組織化されていたことを指摘する。そして,酒造業固有の帳簿記録から,現在の税務調査に相当する検査のもとで酒税が確定し,酒造検査調書が作成されるまでの過程を明らかにした。
ISSN:2434-1193
DOI:10.32177/jjac.7.2_10