他科に学ぶ自己免疫疾患 自己免疫性膵炎

自己免疫性膵炎は, 発症機序に何らかの自己免疫現象の関与が示唆される膵炎として, 1995年に本邦から世界に発信された. 現在は, IgG4 が関連する全身性疾患である IgG4 関連疾患の膵病変と考えられている. 病理組織学的には, 高度のリンパ球と IgG4 陽性形質細胞の浸潤と花筵状線維化 (storiform fibrosis), および閉塞性静脈炎を特徴とし, lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis (LPSP) と呼ばれる. 高齢の男性に好発し, しばしば膵腫瘤を形成して閉塞性黄疸を呈するので, 膵癌との鑑別が問題となる. しかし, 自己...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 120; no. 5; pp. 677 - 684
Main Authors 神澤, 輝実, 来間, 佐和子, 千葉, 和朗, 田畑, 拓久, 小泉, 理美, 菊山, 正隆, 服部, 藍, 白倉, 聡, 杉本, 太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 2017
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Summary:自己免疫性膵炎は, 発症機序に何らかの自己免疫現象の関与が示唆される膵炎として, 1995年に本邦から世界に発信された. 現在は, IgG4 が関連する全身性疾患である IgG4 関連疾患の膵病変と考えられている. 病理組織学的には, 高度のリンパ球と IgG4 陽性形質細胞の浸潤と花筵状線維化 (storiform fibrosis), および閉塞性静脈炎を特徴とし, lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis (LPSP) と呼ばれる. 高齢の男性に好発し, しばしば膵腫瘤を形成して閉塞性黄疸を呈するので, 膵癌との鑑別が問題となる. しかし, 自己免疫性膵炎はステロイドが奏効するので, 無用な外科手術を避けるためにも正確な診断が必要である. 診断は, 自己免疫性膵炎臨床診断基準2011にしたがって, CT や MRI による膵腫大の有無, 内視鏡的膵管造影像, 高 IgG4 血症, 病理所見, 膵外病変 (硬化性胆管炎, 涙腺・唾液腺腫大, 後腹膜線維症), ステロイドの反応性の組み合わせにより行う. び漫性膵腫大, 造影 CT の後期相での膵腫大部の造影効果や膵腫大部の周囲を部分的に取り囲む capsule-like rim 所見, 膵管狭細像などは, 自己免疫性膵炎を示唆する所見であり, 膵癌との鑑別に有用である. しかし, 限局性膵腫大例では超音波内視鏡下吸引細胞診 (EUS-FNA) 等による病理組織学的アプローチが必要となることが多い. 標準治療は, ステロイド治療で, 経口プレドニゾロン0.6mg/kg/日から開始し, 漸減する. 自己免疫性膵炎はステロイド減量・投与中止後にしばしば再燃するので, 再燃防止の目的でプレドニゾロン5mg/日程度の維持療法を行うことが多い. 最近欧米では, 自己免疫性膵炎に対して, 免疫抑制剤やリツキシマブの有用性が報告されている. 長期的予後は不明であるが, ステロイド依存性の自己免疫性膵炎は, 2016年より難病に指定された. 再燃を繰り返す例では膵石が形成されることがあり, また経過中に膵臓癌の合併例が報告されており, 両者の関連性が問題となっている. 一方, 欧米では膵管上皮内へ好中球の浸潤 (granulocytic epithelial lesion(GEL)) を認める idiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP) の病理像を呈する自己免疫性膵炎が注目され, 現在 LPSP を呈する自己免疫性膵炎は1型と, IDCP は2型と呼ばれている.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.120.677