外来心臓リハビリテーション実施患者における 退院時のうつ症状と再入院との関連 O-061 呼吸・循環・代謝

【目的】 後期回復期に外来心臓リハビリテーション(以下、外来CR)を経験した患者においても入院する者が存在しており、この要因を調査する必要がある。うつ症状は再入院を高める要因であり、運動習慣はうつ症状や再入院リスクを軽減することが報告されている。したがって本研究の目的は、外来CR実施患者において、退院時のうつ症状と退院後の再入院リスクとの関連、およびその関連に対する運動習慣確立の有無の影響を調査することである。【方法】 本研究は後ろ向き観察研究である。当院に心血管疾患で入院し治療およびCR後、日常生活が自立して外来CRに移行した患者のうち、うつ症状のデータ欠損例を除外した患者を対象とした。再入...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 61
Main Authors 西村, 天利, 横手, 翼, 中村, 裕輔, 西, 淳一郎, 大淵, 雅子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_61

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Summary:【目的】 後期回復期に外来心臓リハビリテーション(以下、外来CR)を経験した患者においても入院する者が存在しており、この要因を調査する必要がある。うつ症状は再入院を高める要因であり、運動習慣はうつ症状や再入院リスクを軽減することが報告されている。したがって本研究の目的は、外来CR実施患者において、退院時のうつ症状と退院後の再入院リスクとの関連、およびその関連に対する運動習慣確立の有無の影響を調査することである。【方法】 本研究は後ろ向き観察研究である。当院に心血管疾患で入院し治療およびCR後、日常生活が自立して外来CRに移行した患者のうち、うつ症状のデータ欠損例を除外した患者を対象とした。再入院の定義は、退院から1年間の予定されていない心血管疾患の治療目的に入院した場合とした。うつ症状はPatient Health Questionnaire-9を退院前日に評価し、10点以上である者と定義した。運動習慣確立は、外来CR実施期間中に、週1回の外来CR以外で、週2日以上、1日30分以上の自主運動を実施している者とした。うつ症状の有無における再入院率の差をKaplan–Meier法とログランク検定で調査した。うつ症状の有無と再入院率との関連を多変量Cox比例ハザードモデルで調査し、運動習慣確立の有無それぞれでのサブグループ解析を実施した。調整因子は年齢、性別、体格指数、疾患分類、機能的自立度評価法の認知得点、推定糸球体濾過量とした。【結果】 最終解析対象者は244名(平均年齢68.2±11.1歳、男性174名、心不全57名、急性冠症候群114名)であった。うつ症状あり群は12.7%、うつ症状群が87.3%であり、うつ症状あり群は群と比較して、若年(平均64.5歳)で、退院時に半年前より2 ㎏以上体重減少した者が多く(14%)、退院時のShort Physical Performance Batteryの歩行速度と起立速度の得点が低い者が多かった(それぞれ11.1%、18.5%)。うつ症状あり群と群の再入院率はそれぞれ32.3%、13.6%であった。Cox比例ハザードモデルでは、うつ症状群と比較してうつ症状あり群は再入院のハザード比が有意に高く、調整後もその関連は有意であった(ハザード比:3.42、95%信頼区間:1.63-7.17)。運動習慣確立の有無におけるサブグループ解析では、運動習慣確立しなかった群(89名)においてのみ、うつ症状あり群の再入院ハザード比が有意に高かった(ハザード比:8.06、95%信頼区間:2.63-24.69)。【考察】 外来CR実施患者を対象とした場合も、先行研究と同様にうつ症状は再入院リスクを高める要因であることが示された。うつ症状は自律神経機能の悪化により、冠血管疾患、心不全の悪化を招くことが要因として考えられる。外来心リハにおける精神面のフォローが不十分である可能性がある。運動習慣は冠危険因子の是正や予後に効果があることから、外来心リハ実施期間に運動習慣を確立した者においては、うつ症状と再入院に正の関連はみられなかったと考える。また、運動習慣を確立した者においては、うつ症状を呈していても、再入院に対する不安から運動に取り組んでいることが再入院予防に寄与した可能性が考えられる。【結論】 外来CR実施患者において、退院時にうつ症状を呈する者は1年間の心血管再入院率が有意に高く、運動習慣が確立しなかった者において有意であった。うつ症状を呈する者に対してより専門的な心理的アプローチや運動習慣確立に対する個別的な支援を検討する必要がある。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_61