骨髄生検で染色体異常を認めた Werner 症候群の1例
症例は52歳, 女性. 平成14年4月頃から四肢の脱力感を自覚するようになったため近医を受診したところ, 糖尿病と指摘され内服薬を開始された. その後も血糖コントロールが不良で, 四肢の脱力感が軽快しなかったため近くの総合病院を紹介された. 同病院で四肢の著明な筋萎縮に加えて貧血, 前頸部腫瘤, 髄膜腫が認められたため, 精査目的で当院を紹介され受診した. 低身長, 若年性両側白内障, 難治性皮膚潰瘍, 足底の多数の鶏眼, 鳥様顔貌, 高調な声などの所見から Werner 症候群と診断された. 糖尿病の血糖コントロール, 難治性皮膚潰瘍の治療に加え, 貧血, 甲状腺腫および髄膜腫の精査目的で同...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; pp. 639 - 642 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.09.2006
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.43.639 |
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Summary: | 症例は52歳, 女性. 平成14年4月頃から四肢の脱力感を自覚するようになったため近医を受診したところ, 糖尿病と指摘され内服薬を開始された. その後も血糖コントロールが不良で, 四肢の脱力感が軽快しなかったため近くの総合病院を紹介された. 同病院で四肢の著明な筋萎縮に加えて貧血, 前頸部腫瘤, 髄膜腫が認められたため, 精査目的で当院を紹介され受診した. 低身長, 若年性両側白内障, 難治性皮膚潰瘍, 足底の多数の鶏眼, 鳥様顔貌, 高調な声などの所見から Werner 症候群と診断された. 糖尿病の血糖コントロール, 難治性皮膚潰瘍の治療に加え, 貧血, 甲状腺腫および髄膜腫の精査目的で同年11月当科に入院した. 前頸部腫瘤は穿刺吸引細胞診で甲状腺腫と診断されたが, 増大傾向がみられ, 嗄声を呈するようになったこと, および将来的な悪性転化の可能性も考えられたため腺腫摘出術を施行した. 髄膜腫については今後, 増大傾向・悪性化がないかどうかを経過観察する必要があると考えられた. 骨髄生検では, 赤芽球の低形成以外に異常細胞は認められなかったが, 観察した20細胞中2個 (10%) において20番染色体の長腕の欠失がみられた. 将来的に骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ進展する可能性が考えられ, 今後の外来経過観察を慎重に行う予定である. Werner 症候群における多重癌の報告は多いが, そのメカニズムはまだ明らかでない. 本症例は Werner 症候群における多重癌の発症過程を検証する上で貴重な症例と考えられた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.43.639 |