環境保健行政における化学物質対策の変遷と今後の展望 -内分泌かく乱作用問題への対応がもたらしたもの

はじめに 水俣病をはじめとする公害健康被害対応から始まった環境保健行政は, 現在では, 化学物質管理, 有害金属・紫外線・電磁界・温熱環境・花粉飛散等の健康や生態系と関連する一般環境諸要因, さらに, アスベスト問題, 毒ガス弾問題等新たに明らかになった過去からの課題等, 多岐にわたっている. なかでも, 化学物質管理は市民生活のあらゆる場面に密接にかかわっており, 産業活動と一体でなければならず, 国際的にも大きな課題である. 1998年, いわゆる環境ホルモン問題が大きな課題として社会的にも注目され, SPEED'98として取組が開始された. 2005年, それまでに積み重ねられ...

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Published inJournal of Pesticide Science Vol. 31; no. 4; pp. 446 - 451
Main Author 上家和子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農薬学会 2006
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ISSN1348-589X

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Summary:はじめに 水俣病をはじめとする公害健康被害対応から始まった環境保健行政は, 現在では, 化学物質管理, 有害金属・紫外線・電磁界・温熱環境・花粉飛散等の健康や生態系と関連する一般環境諸要因, さらに, アスベスト問題, 毒ガス弾問題等新たに明らかになった過去からの課題等, 多岐にわたっている. なかでも, 化学物質管理は市民生活のあらゆる場面に密接にかかわっており, 産業活動と一体でなければならず, 国際的にも大きな課題である. 1998年, いわゆる環境ホルモン問題が大きな課題として社会的にも注目され, SPEED'98として取組が開始された. 2005年, それまでに積み重ねられた知見や成果をもとに, 全面的に改訂し, ExTEND2005として新たな取組の段階に入った. 本稿では, 内分泌かく乱作用問題への対応が化学物質対策のなかでこれまでに果たしてきた役割を概括し, 今後の展望について考察する. 1. SPEED'98以前の環境保健行政(表1)1950年代の公害行政は, 公害防止条例の制定等によって地方公共団体が担っていた. 当時, 水俣病, イタイイタイ病, 四日市喘息などの公害事件が次々と発生した.
ISSN:1348-589X