リニアコライダー計画と偏極陽電子ビーム

世界の高エネルギー研究所で21世紀初頭の建設を目指して電子・陽電子衝突型加速器, リニアコライダーの検討が進められている. 電子・陽電子の質量が無視できるような高エネルギー領域では, 右巻きヘリシティの電子(陽電子)と左巻きへリシティの電子(陽電子)とは異なる粒子とみなすことができる. このことは電子・陽電子衝突反応においてそれらのへリシティを制御することにより, "異なる"反応過程が観測できることを意味する. つまりスピン状態を変えながら, 調べたい現象を他のバックグラウンドから効率よく識別したり, あるいは異なるスピン状態の干渉によって未知の現象を浮き彫りにする, とい...

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Published in日本物理学会誌 Vol. 53; no. 10; pp. 766 - 774
Main Authors 大森, 恒彦, 広瀬, 立成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本物理学会 05.10.1998
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ISSN0029-0181
2423-8872
DOI10.11316/butsuri1946.53.766

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Summary:世界の高エネルギー研究所で21世紀初頭の建設を目指して電子・陽電子衝突型加速器, リニアコライダーの検討が進められている. 電子・陽電子の質量が無視できるような高エネルギー領域では, 右巻きヘリシティの電子(陽電子)と左巻きへリシティの電子(陽電子)とは異なる粒子とみなすことができる. このことは電子・陽電子衝突反応においてそれらのへリシティを制御することにより, "異なる"反応過程が観測できることを意味する. つまりスピン状態を変えながら, 調べたい現象を他のバックグラウンドから効率よく識別したり, あるいは異なるスピン状態の干渉によって未知の現象を浮き彫りにする, という細やかな芸を駆使することができる. 本稿では電子とともに陽電子を偏極させることの物理的な意義を解説する. そして, 我々が提案してきた陽電子偏極の新しい手法を説明し, その最近の実験結果と日本で計画されているリニアコライダーJLCのための偏極陽電子ビーム生成の技術開発の現状について解説する.
ISSN:0029-0181
2423-8872
DOI:10.11316/butsuri1946.53.766