術後8年目に心タンポナーデで発症した胃癌による癌性心膜炎の1例

症例は55歳の男性で, 主訴は咳漱, 食欲低下, 頸静脈怒脹と下腿浮腫. 平成6年10月に胃癌で胃全摘術, 胆嚢脾臓合併切除を施行した. 平成14年2月から主訴が出現し, 外来を受診した. 心嚢水貯留と心タンポナーデによる右心不全を認めたため, ただちに超音波ガイド下心嚢穿刺を施行した. 心嚢水の細胞診はclass Vであった. 多発性骨転移, 胸膜転移も認められたため, TS-1 (100mg/body/day) を開始した. TS-1投与1コース終了後の心嚢水細胞診は陰性化し, 骨転移数も著明に減少した. TS-1を3コース終了後に癌性胸膜炎の急速な進行と癌性リンパ管炎を併発し, 第229...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 41; no. 12; pp. 2018 - 2022
Main Authors 野田, 顕義, 小林, 慎二郎, 片山, 真史, 諏訪, 敏之, 田中, 一郎, 中野, 浩, 瀬上, 航平, 大坪, 毅人, 櫻井, 丈, 榎本, 武治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2008
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.41.2018

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Summary:症例は55歳の男性で, 主訴は咳漱, 食欲低下, 頸静脈怒脹と下腿浮腫. 平成6年10月に胃癌で胃全摘術, 胆嚢脾臓合併切除を施行した. 平成14年2月から主訴が出現し, 外来を受診した. 心嚢水貯留と心タンポナーデによる右心不全を認めたため, ただちに超音波ガイド下心嚢穿刺を施行した. 心嚢水の細胞診はclass Vであった. 多発性骨転移, 胸膜転移も認められたため, TS-1 (100mg/body/day) を開始した. TS-1投与1コース終了後の心嚢水細胞診は陰性化し, 骨転移数も著明に減少した. TS-1を3コース終了後に癌性胸膜炎の急速な進行と癌性リンパ管炎を併発し, 第229病日に永眠された. 胃癌による癌性心膜炎はまれであるが, 心タンポナーデの可能性も念頭におく必要があると思われた. また, TS-1が奏効したので治療の選択肢として考慮すべきであると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.41.2018