大腸癌肝転移切除後予後に寄与する因子の確立とそれに基づく治療戦略

目的: 大腸癌肝転移切除後の予後規定因子から肝切除に意義ある症例を明らかにすること. 方法: 大腸癌肝転移切除92例を対象とし, 予後因子として, 1. 原発巣因子; 存在部位, 主組織型, 壁深達度, リンパ節転移, 簇出, 2. 肝転移巣因子: 転移時期, 転移個数, 存在部位, 最大径, 3. 治療因子: 切除術式, 予防的肝動注をとりあげ予後を規定する因子を解析した. つぎにその予後規定因子をもとに階層化モデルを作成しその予後を検討した. 結果: 単変量解析では簇出, 壁深達度, リンパ節転移, 肝転移時期, 肝転移個数, 予防的肝動注が有意であった. Stepwise変数選択法では簇...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 34; no. 10; pp. 1506 - 1511
Main Authors 上野, 秀樹, 相原, 司, 橋口, 陽二郎, 初瀬, 一夫, 渡辺, 覚文, 川原林, 伸昭, 大渕, 康弘, 望月, 英隆, 石川, 啓一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2001
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.34.1506

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Summary:目的: 大腸癌肝転移切除後の予後規定因子から肝切除に意義ある症例を明らかにすること. 方法: 大腸癌肝転移切除92例を対象とし, 予後因子として, 1. 原発巣因子; 存在部位, 主組織型, 壁深達度, リンパ節転移, 簇出, 2. 肝転移巣因子: 転移時期, 転移個数, 存在部位, 最大径, 3. 治療因子: 切除術式, 予防的肝動注をとりあげ予後を規定する因子を解析した. つぎにその予後規定因子をもとに階層化モデルを作成しその予後を検討した. 結果: 単変量解析では簇出, 壁深達度, リンパ節転移, 肝転移時期, 肝転移個数, 予防的肝動注が有意であった. Stepwise変数選択法では簇出2, 3 (簇出陽性), 壁深達度se (a2) 以深 (壁深達度陽性), 同時性肝転移 (肝転移時期陽性) の3因子が独立して予後を不良にしていた. これらをふまえA群: 3因子陰性or簇出以外1因子陽性 (39例), B群: 簇出陽性or他2因子陽性 (21例), C群: 簇出かつ他1因子陽性or 3因子陽性 (32例) に階層化した. A, B, C群の5生率は55.5%, 17.5%, 0%であった. 肝外再発率はA群に比べB, C群で, 残肝再発率はA, B群に比べC群で高率であった. 3因子陽性では3年以内に全例死亡した.考察: 大腸癌肝転移に対し簇出, 壁深達度, 転移時期に基づく階層化から3因子陰性あるいは簇出以外1因子陽性は積極的な切除対象であるが, 3因子陽性では何らかの補助療法が確立されない限り切除対象外と考える.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.34.1506