流暢な音声日本語話者像におけるインターセクショナリティ コーダとしての自己エスノグラフィーによる考察
本稿では,ディスアビリティを抱えるろう者の両親を持つ筆者の自己エスノグラフィーをもとに,社会カテゴリーの交差上に浮かび上がる社会的アイデンティティとしての音声日本語話者像を描き出すとともに,そこで規定される音声日本語の流暢性について検討した。その結果,音声日本語話者像は,音声日本語ネイティブという資本の正当性を確立し,権力を維持するための闘争が繰り広げられる人間関係の中で生み出されるものであり,その流暢性は社会に潜む権力関係に基づく社会的不平等と結びつく形で規定されていることが明らかになった。そのため,流暢性を巡って抑圧されるマイノリティのアイデンティティポリティクスを取り戻すには,マイノリテ...
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Published in | 言語文化教育研究 Vol. 20; pp. 27 - 37 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
言語文化教育研究学会:ALCE
23.12.2022
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Subjects | |
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ISSN | 2188-9600 |
DOI | 10.14960/gbkkg.20.27 |
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Summary: | 本稿では,ディスアビリティを抱えるろう者の両親を持つ筆者の自己エスノグラフィーをもとに,社会カテゴリーの交差上に浮かび上がる社会的アイデンティティとしての音声日本語話者像を描き出すとともに,そこで規定される音声日本語の流暢性について検討した。その結果,音声日本語話者像は,音声日本語ネイティブという資本の正当性を確立し,権力を維持するための闘争が繰り広げられる人間関係の中で生み出されるものであり,その流暢性は社会に潜む権力関係に基づく社会的不平等と結びつく形で規定されていることが明らかになった。そのため,流暢性を巡って抑圧されるマイノリティのアイデンティティポリティクスを取り戻すには,マイノリティを取り巻く社会カテゴリーを洗い出し,音声日本語話者像を新たなカテゴリーの交差に位置づけることに加え,この構造的不正義を支えるサイレントマジョリティを社会カテゴリーの交差から可視化していくことが重要であると考えられる。 |
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ISSN: | 2188-9600 |
DOI: | 10.14960/gbkkg.20.27 |