振幅値に注目した筋電図分析 振幅密度分析

顎機能障害患者の咀嚼筋や胸鎖乳突筋の表面筋電図検査を行うと, ほぼ一定の小さな振幅を持った自発的な持続性の筋放電が安静時, 最大かみしめ直後, あるいは咀嚼の直前直後などに記録されることがある. このような自発放電の存在についてはすでに, 筋の過緊張や疼痛との関連について論じられており, 咬合治療により自発旅電が消失するとの報告がある.これらの報告は, 咀嚼筋や側頸筋に見られる自発放電が顎機能障害の症状との関係が深いことを示唆している.我々は, 顎機能障害の症状の程度と自発放電の発生頻度, 出現率には何らかの関連があるものと考える. もしそうであれば規定された被験運動を一定の条件で行わせた場合...

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Published in日本顎口腔機能学会雑誌 Vol. 1; no. 1; pp. 175 - 182
Main Authors 村松, 瑞人, 小林, 博, 河野, 正司, 土田, 幸弘, 佐藤, 斉, 堀, 久至, 平野, 秀利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎口腔機能学会 21.12.1994
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Summary:顎機能障害患者の咀嚼筋や胸鎖乳突筋の表面筋電図検査を行うと, ほぼ一定の小さな振幅を持った自発的な持続性の筋放電が安静時, 最大かみしめ直後, あるいは咀嚼の直前直後などに記録されることがある. このような自発放電の存在についてはすでに, 筋の過緊張や疼痛との関連について論じられており, 咬合治療により自発旅電が消失するとの報告がある.これらの報告は, 咀嚼筋や側頸筋に見られる自発放電が顎機能障害の症状との関係が深いことを示唆している.我々は, 顎機能障害の症状の程度と自発放電の発生頻度, 出現率には何らかの関連があるものと考える. もしそうであれば規定された被験運動を一定の条件で行わせた場合, 一定の検査時間における自発放電の発生頻度をパラメータとすることで顎機能障害の症状の程度の判定, あるいは治療効果の判定をすることはきわめて合理的な検査となりうる. 実際に自発放電の検査時間内の発生頻度の算出を効率的に行うため, コンピューターで自動的に算出を行ないたい.これには, 自発放電と随意的な筋収縮に伴う筋放電とを自動的に識別しなければならない.現在, 自発放電と随意的な筋収縮に伴う筋放電の識別は, 検者がその波形の特徴に基づいて行っている.そこで我々は自発放電を認識する方法として, その波形の特徴が随意的な筋収縮に伴う筋放電波形とは異なることに注目して新たに振幅密度分析法を開発した. 振幅密度分析は, 分析対象である信号波形の一定時間内の電圧データを電圧に対する分布密度として解析する分析法である. 今回はまず, 発信器による波形の特徴が既知である3種類の信号波形に本分析法を用いて分析した.その結果, 振幅密度分析により信号波形の形の違いを判別できることが分かった.次に臨床応用例として正常被験者の最大かみしめ時の筋放電と, 表面筋電図検査にて自発放電が記録された顎機能障害患者の自発放電での分析を行った.さらに振幅密度分布に半値幅, 半値幅1最大振幅という評価値を導入して, 正常な最大かみしめ時の筋放電と自発放電を区別できる事が分かった. 以上より, 振幅密度分析は, 随意的な筋放電と自発放電を自動的に区別でき, 自発放電の発生頻度の算出, さらには顎機能障害患者の検査, 診断に役立つことが期待される.
ISSN:1340-9085
1883-986X
DOI:10.7144/sgf.1.175