高度直腸狭窄をきたした直腸憩室症の1例

症例は65歳の男性で, 主訴は腹部膨満感. 直腸鏡検査で腫瘍性病変と高度の狭窄がみられた. 生検病理では悪性像はなかったが, 直腸癌として腹会陰式直腸切断術 (Miles手術) を施行した. 8cm大, 弾性硬の腫瘤を認め, 直腸は著明に狭窄し周囲臓器へ強固に癒着していた. 摘出標本病理では悪性所見なく, 直腸の急性, 慢性憩室炎と診断された. 術後経過良好で, 24日目で退院した. 他の結腸憩室症に比べて直腸のものはまれであり, 臨床症状を有する症例の報告は本邦では自験例を含めて15例のみであった. これらのうち9症例に対してMiles手術3例, Hartmann手術3例, 低位前方切除術1...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 30; no. 7; pp. 1804 - 1808
Main Authors 板本, 敏行, 大城, 久司, 田中, 一誠, 石川, 哲大, 大石, 幸一, 角舎, 学行, 山本, 泰次, 木村, まり, 大城, 望史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 1997
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.30.1804

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Summary:症例は65歳の男性で, 主訴は腹部膨満感. 直腸鏡検査で腫瘍性病変と高度の狭窄がみられた. 生検病理では悪性像はなかったが, 直腸癌として腹会陰式直腸切断術 (Miles手術) を施行した. 8cm大, 弾性硬の腫瘤を認め, 直腸は著明に狭窄し周囲臓器へ強固に癒着していた. 摘出標本病理では悪性所見なく, 直腸の急性, 慢性憩室炎と診断された. 術後経過良好で, 24日目で退院した. 他の結腸憩室症に比べて直腸のものはまれであり, 臨床症状を有する症例の報告は本邦では自験例を含めて15例のみであった. これらのうち9症例に対してMiles手術3例, Hartmann手術3例, 低位前方切除術1例, pull-through法1例, 骨盤内臓全摘術1例が施行された. 術式はやや過大侵襲かと思えるが, 骨盤腔内に炎症性腫瘤を形成し, 著明な狭窄を伴うものは術前診断, 特に癌との鑑別は難しく, 病変部の切除にも難渋する疾患である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.30.1804