スポーツの二つの焦点とリスク リスクトレードオフの観点から

本稿では、ルーマンの社会システム論の立場からスポーツ論を展開しているR. シュティッヒヴェーに依拠して、スポーツという社会領域を、二重の焦点をもつ楕円として捉えた上で、スポーツとリスクとの複雑な関わり合いを、リスクトレードオフならびにリスクの選択(あるいは非選択)という視角から、考える。スポーツをめぐるリスクトレードオフとしては、スポーツと資本主義との強い結びつきゆえに、二つの焦点のうち「公衆」の側に重点がおかれることで、それが「競技」の側でのネガティブリスクを招きやすい、という傾向をさしあたり確認はできるかもしれないが、リスクの「選択」を、リスク管理や評価にとって難問の一つとして捉える立場か...

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Published inスポーツ社会学研究 Vol. 31; no. 2; pp. 21 - 34
Main Author 小松, 丈晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本スポーツ社会学会 2023
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ISSN0919-2751
2185-8691
DOI10.5987/jjsss.31-02-07

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Summary:本稿では、ルーマンの社会システム論の立場からスポーツ論を展開しているR. シュティッヒヴェーに依拠して、スポーツという社会領域を、二重の焦点をもつ楕円として捉えた上で、スポーツとリスクとの複雑な関わり合いを、リスクトレードオフならびにリスクの選択(あるいは非選択)という視角から、考える。スポーツをめぐるリスクトレードオフとしては、スポーツと資本主義との強い結びつきゆえに、二つの焦点のうち「公衆」の側に重点がおかれることで、それが「競技」の側でのネガティブリスクを招きやすい、という傾向をさしあたり確認はできるかもしれないが、リスクの「選択」を、リスク管理や評価にとって難問の一つとして捉える立場からすると、そもそもリスクトレードオフが、一つの「問題」として成立する前提として、リスクの選択あるいは非選択を条件づけるさまざまな要因がある点に、留意すべきである。本稿では、何らかの具体的な事例の分析というよりも、スポーツとリスクとの複雑な関係について社会学的に考えるための一つの理論的な視点について、検討してみたい。
ISSN:0919-2751
2185-8691
DOI:10.5987/jjsss.31-02-07