作業療法実践における対象者との協業的な関係性の構築 相互交流的リーズニング実践のプロセス

本研究の目的は,臨床場面で作業療法士が相互交流的リーズニングを活用し,どのように対象者と協業的な関係性の構築に至るのか,そのプロセスを明らかにすることである.作業療法士の経験年数,所属する組織,作業療法の実施時間を考慮し選定した作業療法士5名に半構造化面接を行い,収集したデータを,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて質的帰納的に継続的比較分析を行った.299のデータから,7個のカテゴリー,20個のサブカテゴリーが生成された.協業的な関係性の構築に至るプロセスは,関係性の構築の手掛かりとなる【関わるきっかけとなる言動】への対応から始まり,【フィードバックを受けた経験】や【同僚作業療法士...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in昭和学士会雑誌 Vol. 82; no. 2; pp. 75 - 85
Main Authors 内堀, 謙吾, 長島, 潤, 渡部, 喬之, 鈴木, 久義, 千賀, 浩太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2022
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.82.75

Cover

More Information
Summary:本研究の目的は,臨床場面で作業療法士が相互交流的リーズニングを活用し,どのように対象者と協業的な関係性の構築に至るのか,そのプロセスを明らかにすることである.作業療法士の経験年数,所属する組織,作業療法の実施時間を考慮し選定した作業療法士5名に半構造化面接を行い,収集したデータを,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて質的帰納的に継続的比較分析を行った.299のデータから,7個のカテゴリー,20個のサブカテゴリーが生成された.協業的な関係性の構築に至るプロセスは,関係性の構築の手掛かりとなる【関わるきっかけとなる言動】への対応から始まり,【フィードバックを受けた経験】や【同僚作業療法士の介入を見た学び】に影響を受けながら,作業療法士の【客観的な判断に基づく関わり】や【優しく人間味のある関わり】のもと,【対象者と経験と目標の共有】を行い,【ともに歩んでいく関係性の構築】に至るプロセスであることが判明した.作業療法士は,どんな言動も【関わるきっかけとなる言動】だと認識しており,それは対象者をどのように支援していくのかという作業療法士の自己への対峙が関係の始まりに影響していると推察される.関係を形成する段階では,医療者側の視点に比重が置かれた【客観的な判断に基づく関わり】と人間的な関わりに視点に比重が置かれた【優しく人間味のある関わり】の2つの異なる関わりから対象者を理解していたと推察される.関係を強化する段階では,【対象者と経験と目標の共有】を行い,意思決定に対象者と共に関わる事が,対象者を作業療法実践の参加に導き【ともに歩んでいく関係性の構築】に至ると推察される.このように作業療法士と対象者の協業は,段階的なプロセスにより構築されると推察される.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.82.75