病棟看護婦の業務量と看護の質に関する研究 看護実践能力と業務所要時間との関係について
本研究は病棟看護婦の適正配置に資することを目的に, 昭和大学病院の病棟に勤務している深夜・日勤・準夜の各勤務帯の看護婦, 延べ163人を調査対象として, 看護業務量を24時間のタイムスタディ法によって調査すると共に, 本院で採用している臨床看護実践レベル (クリニカルラダー評価) の調査票を用いて各看護婦の看護実践レベル (能力) を把握し, 各看護婦の業務量と看護実践レベルとの関係を検討したものである.各看護婦が看護業務内容別に従事した時間数 (分) の平均値と標準偏差値を用いてTスコアを求め, ラダー評価値との関連を重回帰分析法を用いて解析した. 勤務年数別に業務内容別の看護に従事する時間...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 57; no. 5; pp. 423 - 434 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
28.10.1997
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.57.423 |
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Summary: | 本研究は病棟看護婦の適正配置に資することを目的に, 昭和大学病院の病棟に勤務している深夜・日勤・準夜の各勤務帯の看護婦, 延べ163人を調査対象として, 看護業務量を24時間のタイムスタディ法によって調査すると共に, 本院で採用している臨床看護実践レベル (クリニカルラダー評価) の調査票を用いて各看護婦の看護実践レベル (能力) を把握し, 各看護婦の業務量と看護実践レベルとの関係を検討したものである.各看護婦が看護業務内容別に従事した時間数 (分) の平均値と標準偏差値を用いてTスコアを求め, ラダー評価値との関連を重回帰分析法を用いて解析した. 勤務年数別に業務内容別の看護に従事する時間をみると, 全ての勤務年数において「観察」と「コミュニケーション」に多くの時間がさかれているが, 勤務年数の各群間の比較では3ないし5年および5年以上に多いのは「呼吸のケア」と「救急」で, 3年未満に多いのは「手術」であった. 勤務年数別にTスコアをみると3年未満では基本的な看護サービスである「排泄」と「食事」が高く3年ないし5年未満と5年以上では「排泄」と「呼吸のケア」が高かった.すなわち, 3年以上の経験者には呼吸のケアなど, より高度なサービスにより多くの時間がさかれていた. 次に, 病棟看護婦の臨床看護実践レベル項目の評価得点の平均は, いずれの項目においても勤務年数が長くなるにつれてラダー評価得点が高かったが, 全体的に評価の平均得点はかなり低い得点であった.とくに「研究」については全ての勤務年数において低かった. 各項目別の臨床看護実践レベルの評価得点と看護業務量のTスコアとの重回帰分析の結果では, 勤務年数別にみると勤務年数が3年未満については, 「評価2」 (管理, 教育および研究についての総合評価) が高いほどTスコアの示す得点が高く業務にかける時間が長くなることを示し, 逆に「評価1」 (看護実践についての総合評価) が高いほど, 業務にかける時間が短くなることを示していた.また, 「管理」が高いほどTスコアが高くなり逆に「研究」が低いほどTスコアが高くなっていた.また, 勤務年数が3ないし5年未満についてみると, 「計画の立案」の得点が高いほど業務にかける時間が短く, 逆に, 「実践」の評価得点が高いほど業務にかかわる時間が長かった.なお, 「教育」や「管理」についても同様に得点が高い看護婦ほど業務にかける時間が長かった.この「計画の立案」の得点が高いということは, 問題の優先度や緊急度を判別出来ることや社会的資源の活用が出来る能力を示す指標であり, これらを効率的に行なうことが業務の効率化に寄与する可能性を示唆していた.キーワード: 看護業務量, クリニカルラダー, Tスコア, 重回帰分析 |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.57.423 |