避難所・応急仮設住宅の現状と課題 高齢者・障がい者への配慮や健康影響の視点から

災害時には,災害による直接的な死亡だけでなく,避難生活等において亡くなる震災関連死や健康被害などの問題があり,その多くが高齢者・障がい者などの要配慮者・避難行動要支援者である.本稿は,避難所・応急仮設住宅の供与について,高齢者・障がい者への配慮や健康影響の視点から,東日本大震災以降の動向や今後取り組むべき課題を整理することを目的とする.内閣府や復興庁,厚生労働省などの行政資料や,医中誌等を中心に主に東日本大震災後に発表された研究論文・資料を収集し整理した.東日本大震災では,その被害規模の大きさや津波被害地での避難所・応急仮設住宅の開設が困難であったことなどから,様々な工夫を凝らした避難所・応急...

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Published in保健医療科学 Vol. 70; no. 4; pp. 407 - 417
Main Author 阪東, 美智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立保健医療科学院 29.10.2021
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Summary:災害時には,災害による直接的な死亡だけでなく,避難生活等において亡くなる震災関連死や健康被害などの問題があり,その多くが高齢者・障がい者などの要配慮者・避難行動要支援者である.本稿は,避難所・応急仮設住宅の供与について,高齢者・障がい者への配慮や健康影響の視点から,東日本大震災以降の動向や今後取り組むべき課題を整理することを目的とする.内閣府や復興庁,厚生労働省などの行政資料や,医中誌等を中心に主に東日本大震災後に発表された研究論文・資料を収集し整理した.東日本大震災では,その被害規模の大きさや津波被害地での避難所・応急仮設住宅の開設が困難であったことなどから,様々な工夫を凝らした避難所・応急仮設住宅の設置・運営が行われた.たとえば,賃貸型応急仮設住宅の導入がその例である.一方,災害救助法が想定していなかった「在宅被災者」など新たな課題も表出した.避難所・応急仮設住宅に関する研究の蓄積と,それを反映した制度の改革などにより,徐々に状況は改善しているが,避難所・応急仮設住宅の物理的環境の問題は依然として解消されていない.また,結露やカビ・ダニなどの室内環境の問題も残されている.今後も高齢化が進む中,高齢者・障がい者に配慮した避難所・応急仮設住宅の環境整備は,震災関連死の予防やその後の健康被害の予防のためにも早急に取り組むべき課題である.
ISSN:1347-6459
2432-0722
DOI:10.20683/jniph.70.4_407