「みんなで決める」ことの相互行為研究 学級での活動を成り立たせる教師の教育実践に着目して

本稿では,小学1年生の学級でなされた,学級の活動方針を「みんなで決める」実践に着目し,教師- 児童間の相互行為から,いかに教師が児童を学級の活動に参画させているのかを分析することで,学級における制度化の過程の一端を明らかにした。  分析の結果,児童が従う「みんなで決めた」という事実を構成する際には,教師は一貫して提案者として振る舞い,すべての児童が意見を述べることを可能にする状況を構成した上で,個々の児童の意見と活動方針の決定を明確には結びつけずに,学級の活動方針を決めていた。そこでの「みんな」とは,個々の児童の総和ではなく,学級の成員であれば含まれることが当然のこととして扱われる規範的なもの...

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Published in教育社会学研究 Vol. 111; pp. 25 - 44
Main Author 平井, ⼤輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本教育社会学会 30.12.2022
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ISSN0387-3145
2185-0186
DOI10.11151/eds.111.25

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Summary:本稿では,小学1年生の学級でなされた,学級の活動方針を「みんなで決める」実践に着目し,教師- 児童間の相互行為から,いかに教師が児童を学級の活動に参画させているのかを分析することで,学級における制度化の過程の一端を明らかにした。  分析の結果,児童が従う「みんなで決めた」という事実を構成する際には,教師は一貫して提案者として振る舞い,すべての児童が意見を述べることを可能にする状況を構成した上で,個々の児童の意見と活動方針の決定を明確には結びつけずに,学級の活動方針を決めていた。そこでの「みんな」とは,個々の児童の総和ではなく,学級の成員であれば含まれることが当然のこととして扱われる規範的なものであった。規範的なものとして「みんな」が成立することで,決定事項に不満をもつ児童も含め,児童を強制的に従わせることが可能となっていた。また,「みんなで決める」過程においては,あえて児童に否定的な意見を述べさせることで,個々の児童が抱える問題を,学級で解決し得る/すべき問題とし,学級においてすべての児童が共通の方針のもとで活動できる状況を構成していた。  以上の分析を踏まえ,「みんなで決める」過程は学級における制度化の初期形態であり,児童は「みんなで決める」過程において単に抑圧されているのではなく,「みんな」に統制されることで,学級の一員として参画することが可能になっていることを指摘した。
ISSN:0387-3145
2185-0186
DOI:10.11151/eds.111.25