リボソーム小サブユニットにおける開始tRNA安定化の分子機構

細胞内の様々な生命現象においてタンパク質はその機能を発揮し,多くの役割を果たしている.このような機能を担うタンパク質自身はリボソームと呼ばれるタンパク質・核酸の巨大分子複合体により合成されている.タンパク質の合成過程においては様々な分子が関与することが分かっているが,核酸分子であるtransfer RNA(tRNA)が果たす役割は大きい.本研究においてはtRNA分子がリボソーム内においてどのように安定化されているかを理解するために粗視化分子動力学シミュレーションを実行し,解離経路上の自由エネルギー計算を行った.その結果,tRNAはリボソーム環境に存在しているいくつかの分子により安定化されている...

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Published inアンサンブル Vol. 26; no. 3; pp. 269 - 275
Main Author 森 義治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 分子シミュレーション学会 31.07.2024
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ISSN1884-6750
1884-5088
DOI10.11436/mssj.26.269

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Summary:細胞内の様々な生命現象においてタンパク質はその機能を発揮し,多くの役割を果たしている.このような機能を担うタンパク質自身はリボソームと呼ばれるタンパク質・核酸の巨大分子複合体により合成されている.タンパク質の合成過程においては様々な分子が関与することが分かっているが,核酸分子であるtransfer RNA(tRNA)が果たす役割は大きい.本研究においてはtRNA分子がリボソーム内においてどのように安定化されているかを理解するために粗視化分子動力学シミュレーションを実行し,解離経路上の自由エネルギー計算を行った.その結果,tRNAはリボソーム環境に存在しているいくつかの分子により安定化されていることが分かったが,その中でもリボソームタンパク質と呼ばれる分子に着目した.リボソームタンパク質のC末端領域に存在する荷電性アミノ酸残基はtRNAの安定化に重要な役割を果たしていることが分かった.このような知見は,リボソームという生命に普遍的に存在する分子を通じて生物における分子進化の理解に寄与することも期待される.
ISSN:1884-6750
1884-5088
DOI:10.11436/mssj.26.269