空置大腸に発生した腸炎(Diversion Colitis and Proctitis)の1例

diversion colitis and proctitisは1981年Glotzerが提唱した病態で,人工肛門の造設で腸内容が通過しなくなったため空置大腸に発生する腸炎である.最近一疾患単位として認められつつあるが本邦での報告例はない.われわれはその1例を経験したので報告する.症例は70歳,男性.Borrmann III型の横行結腸癌にて横行結腸部分切除,上行結腸人工肛門造設,横行結腸粘液凄造設術を行った。1年5カ月後肛門と粘液瘻より血性分泌物の排泄を訴えた.空置大腸(粘液瘻と肛門の間の大腸)の注腸X線検査で微小な陥凹性病変を,内視鏡検査で易出血性,びらんを認めた,生検で上皮の変性・萎縮,...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 45; no. 1; pp. 79 - 82
Main Authors 水口, 博之, 岡村, 孝, 渡辺, 正道, 鳥屋, 城男, 末岡, 均, 石原, 通臣, 大久保, 雅彦, 有馬, 正明
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本大腸肛門病学会 1992
Subjects
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.45.79

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Summary:diversion colitis and proctitisは1981年Glotzerが提唱した病態で,人工肛門の造設で腸内容が通過しなくなったため空置大腸に発生する腸炎である.最近一疾患単位として認められつつあるが本邦での報告例はない.われわれはその1例を経験したので報告する.症例は70歳,男性.Borrmann III型の横行結腸癌にて横行結腸部分切除,上行結腸人工肛門造設,横行結腸粘液凄造設術を行った。1年5カ月後肛門と粘液瘻より血性分泌物の排泄を訴えた.空置大腸(粘液瘻と肛門の間の大腸)の注腸X線検査で微小な陥凹性病変を,内視鏡検査で易出血性,びらんを認めた,生検で上皮の変性・萎縮,線維化,crypt abscessを示した.人工肛門より口側の大腸と回腸末端部に異常所見はなかった.以上よりGlotzerの本症の診断基準を満たすと判断した.本症は興味ある病態であるが原因は不明でさらに研究が必要であり,人工肛門の造設で空置大腸を生じた患者の診察にあたって念頭におくべき疾患と老えられる.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.45.79