DPP-IV 阻害薬Vildagliptin による膵β細胞保護作用の分子機構の解明~2型糖尿病モデルおよび非糖尿病コントロールマウスを用いた検討
「抄録」DPP-IV阻害薬による耐糖能改善, 膵β細胞機能障害進展阻止作用が明らかになっているが, その分子機構については不明な点が多い. 本研究は, DPP-IV阻害薬による膵β細胞保護効果の分子機構を明らかにするために, 糖尿病モデルKKAy-TaJcl(KKAy)マウスと非糖尿病モデルC57BL/6J(B6)マウスを用いて, 生化学的や組織学的検討に加え, 膵β細胞特異的な遺伝子発現の網羅的解析を行った. 8週齢雄性の両モデルマウスを, それぞれVildagliptin投与群と非投与群の2群に分けて4週間介入した. 遺伝子発現はLCM法により取り出した膵ラ氏島コア領域サンプルを用いて,...
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Published in | 川崎医学会誌 Vol. 37; no. 4; pp. 195 - 210 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
川崎医学会
2011
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ISSN | 0386-5924 |
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Summary: | 「抄録」DPP-IV阻害薬による耐糖能改善, 膵β細胞機能障害進展阻止作用が明らかになっているが, その分子機構については不明な点が多い. 本研究は, DPP-IV阻害薬による膵β細胞保護効果の分子機構を明らかにするために, 糖尿病モデルKKAy-TaJcl(KKAy)マウスと非糖尿病モデルC57BL/6J(B6)マウスを用いて, 生化学的や組織学的検討に加え, 膵β細胞特異的な遺伝子発現の網羅的解析を行った. 8週齢雄性の両モデルマウスを, それぞれVildagliptin投与群と非投与群の2群に分けて4週間介入した. 遺伝子発現はLCM法により取り出した膵ラ氏島コア領域サンプルを用いて, Real timeRT-PCR法により解析した. KKAy, B6ともに, 介入期間中の摂餌量, 体重および介入終了後の空腹時血糖値, 血中インスリン値, 血中グルカゴン値, 活性型GLP-1値は, Vildagliptin投与の有無で差を認めなかった. KKAyの血中中性脂肪値, 膵ラ氏島中性脂肪含量およびインスリン感受性はVildagliptin投与群で有意な改善を認めた. 経口糖負荷試験でみた耐糖能はvildagliptinを投与したKKAyで有意に改善し, インスリン分泌増加を伴っていた. 糖負荷後の活性型GLP-1血中レベルは, 両マウスともVildagliptin投与で有意に高値を示した. 膵ラ氏島のインスリン含量および高濃度グルコース応答性インスリン分泌反応, 膵β細胞重量はVildagliptin投与によって有意に増加した. 遺伝子発現解析の結果, KKAy, B6ともに, Vildagliptin投与群で分化増殖関連遺伝子発現の有意な増加を認めた. 一方, 抗酸化ストレス関連遺伝子発現の増加, 小胞体ストレスおよびアポトーシス誘導遺伝子発現の低下, 抗アポトーシス関連遺伝子発現の増加をVildgliptin投与KKAyマウスでのみ認めた. 膵ラ氏島を用いた免疫染色の結果は, 遺伝子解析結果と良く一致していた. DPP-IV阻害薬のβ細胞保護効果の分子機構として, 活性型GLP-1増加によるGLP-1シグナル増強が, 直接的な細胞の分化・増殖促進効果と, 糖脂質代謝改善による間接的なβ細胞の酸化ストレス, 小胞体ストレスの軽減, アポトーシス抑制効果をもたらす可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0386-5924 |