上位胸髄症に対する胸骨柄縦割前方進入法の経験

「はじめに」胸髄症は頚髄症に比べその発生頻度は低いが, その症状発現に動的要因の関与が少ないため一旦脊髄症状が生じた場合多くは保存療法が無効で観血的治療の適応となることが多い. さらに上位胸椎は通常の前方アプローチが困難であり, 上位胸髄症に対してのアプローチとして前方, 後方法を含め多くの術式が考案施行されている1)~5). われわれは2例の上位胸髄症に対し, 胸骨柄縦割前方進入法を用いた前方除圧固定術の経験を得たので若干の考察を加え報告する. 対象および方法 対象は上位胸椎レベルに生じた後縦靭帯骨化症1例, 椎間板ヘルニア1例の計2例である. 症例1:60歳, 男性. 主訴は進行性の歩行障...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 47; no. 3; pp. 958 - 961
Main Authors 土屋邦喜, 寺田和正, 斎藤太一, 小原伸夫, 岩本幸英
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 1998
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Summary:「はじめに」胸髄症は頚髄症に比べその発生頻度は低いが, その症状発現に動的要因の関与が少ないため一旦脊髄症状が生じた場合多くは保存療法が無効で観血的治療の適応となることが多い. さらに上位胸椎は通常の前方アプローチが困難であり, 上位胸髄症に対してのアプローチとして前方, 後方法を含め多くの術式が考案施行されている1)~5). われわれは2例の上位胸髄症に対し, 胸骨柄縦割前方進入法を用いた前方除圧固定術の経験を得たので若干の考察を加え報告する. 対象および方法 対象は上位胸椎レベルに生じた後縦靭帯骨化症1例, 椎間板ヘルニア1例の計2例である. 症例1:60歳, 男性. 主訴は進行性の歩行障害である. 1995年頃より特に誘因なく両大腿部痛出現, 1996年初頭より歩行困難出現, 1997年になり独歩不能となり, 手術目的で1997年2月入院となった. 既往歴として頚椎前方固定を他院にて施行されている. 入院時は両下肢痙性および筋力低下のため歩行不能で, 下肢筋力は両側大腿四頭筋以下MMT1~2程度である. 両側T4レベル以下に知覚障害があり, 右C8領域にも知覚障害を有するが前回の頚椎手術後より持続しているものである. 両下肢腱反射はPTR, ATRとも著明に亢進しバビンスキー反射も陽性である.
ISSN:0037-1033