脳血栓症における血中エンドセリン-1, t-PAおよびPAI-1 急性期, 慢性期の測定値および静脈うっ滞試験からの検討

脳血栓症における血管内皮細胞由来因子が病態にどのように関与するかを知る目的で, ラクナ梗塞 (LAC) およびアテローム血栓性脳梗塞 (ATH) の急性期および慢性期を対象に, 血栓促進因子の可能性が示唆されている血中エンドセリン-1 (ET-1), 線溶因子の組織プラスミノーゲンアクチベーター (t-PA) およびそのインヒビター (PAI-1) を測定し, 併せて静脈うっ滞試験を慢性期に施行した.脳血栓症の第1病日のET4は健常範囲下限から第7病日にかけさらに低下し, 健常群と比べ, 慢性期においても低値であった.一方, 両脳血栓症のt-PAは第1病日から第7病日にかけ増加傾向を示し, 特...

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Published in脳卒中 Vol. 18; no. 3; pp. 184 - 192
Main Authors 市野, 武司, 成田, 信義, 杉原, 浩, 清水, 亨, 鴨川, 旭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 25.06.1996
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.18.184

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Summary:脳血栓症における血管内皮細胞由来因子が病態にどのように関与するかを知る目的で, ラクナ梗塞 (LAC) およびアテローム血栓性脳梗塞 (ATH) の急性期および慢性期を対象に, 血栓促進因子の可能性が示唆されている血中エンドセリン-1 (ET-1), 線溶因子の組織プラスミノーゲンアクチベーター (t-PA) およびそのインヒビター (PAI-1) を測定し, 併せて静脈うっ滞試験を慢性期に施行した.脳血栓症の第1病日のET4は健常範囲下限から第7病日にかけさらに低下し, 健常群と比べ, 慢性期においても低値であった.一方, 両脳血栓症のt-PAは第1病日から第7病日にかけ増加傾向を示し, 特にATHで健常およびLACに比し高値であった.またtotalPAI-1は両脳血栓症で高値となったが経時的変動は認めなかった.両脳血栓症のET-1およびt-PA両因子の変動は静脈うっ滞試験における血管内皮細胞のET-1放出抑制傾向, t-PA放出充進傾向から説明される.すなわち, 基礎にPAI-1の高値があり, その適応反応としてt-PA高値と, それに続くET-1放出抑制状態がある.脳血栓症の病態における血管内皮細胞機能の関与を知る上でこれら因子の変動を把握することが重要である.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.18.184