住血吸虫に見られる糖鎖構造の多様性

住血吸虫症は二宿主性の吸血虫によって引き起こされる寄生虫病である。過去10年間に及ぶ研究の成果、この寄生虫の発生過程における糖鎖付加パターン上の変化に対する理解に大きな進展があった。蓄積されたデータによると、住血吸虫のN-結合型糖鎖の生合成初期段階は哺乳類の場合と同様で、その結果類似のコア構造ができるが、住血吸虫ではさらにこの構造に修飾が加わったり、末端にフコシル化した配列が加えられるなど、構造上の差が著しい。O-結合型糖鎖に関しては、従来から知られる1型、2型構造の他に、新規コア構造が同定されている。また、多フコシル化した、異常に長い複雑な構造のO-結合型糖鎖も幾つか見つかる。一方、Schi...

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Published inTrends in Glycoscience and Glycotechnology Vol. 13; no. 73; pp. 493 - 506
Main Author 平林, 淳
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age) 02.09.2001
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ISSN0915-7352
1883-2113
DOI10.4052/tigg.13.493

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Summary:住血吸虫症は二宿主性の吸血虫によって引き起こされる寄生虫病である。過去10年間に及ぶ研究の成果、この寄生虫の発生過程における糖鎖付加パターン上の変化に対する理解に大きな進展があった。蓄積されたデータによると、住血吸虫のN-結合型糖鎖の生合成初期段階は哺乳類の場合と同様で、その結果類似のコア構造ができるが、住血吸虫ではさらにこの構造に修飾が加わったり、末端にフコシル化した配列が加えられるなど、構造上の差が著しい。O-結合型糖鎖に関しては、従来から知られる1型、2型構造の他に、新規コア構造が同定されている。また、多フコシル化した、異常に長い複雑な構造のO-結合型糖鎖も幾つか見つかる。一方、Schistosoma mansoni (いわゆる住血吸虫) のスフィンゴ糖脂質は schisto コアという従来にないコア構造をもつ。この新規コア構造から、さらにこれまで知られていないユニークな構造が伸長しているらしい。本レビューでは、住血吸虫のグライコーム解明に向けた研究上の進展を振り返る。
ISSN:0915-7352
1883-2113
DOI:10.4052/tigg.13.493