慢性閉塞性換気障害を合併した両側性同時性肺多発癌の1手術例

症例は66歳男性。右S6原発で先進部が下幹にまで表層進展した扁平上皮癌 (pT2NOMO) と左B3入口部に発生した肺門部早期扁平上皮癌 (pT1N0M0) の両側性同時性肺多発癌であった.慢性閉塞性換気障害を合併していたため, 手術は2期的に行った.はじめに右S6肺癌に対して中葉の温存を目的に右下葉スリーブ切除を行い, のちに左B3早期癌に対して左S1+2+S3切除を行った.両側手術後の肺機能の回復は術前に肺血流シソチグラフィーを用いて算出した予測値を上回って良好で, 術後6ヵ月を過ぎると安定し, 肺血流及び肺換気シンチグラフィーによる追跡でも左右肺に均衡のとれた分布がみられた.2年後の現在...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科 Vol. 5; no. 5; pp. 554 - 561
Main Authors 松山, 孝昭, 新美, 隆男, 梶田, 正文
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.07.1991
Subjects
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ISSN0917-4141
1884-1724
DOI10.2995/jacsurg1987.5.554

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Summary:症例は66歳男性。右S6原発で先進部が下幹にまで表層進展した扁平上皮癌 (pT2NOMO) と左B3入口部に発生した肺門部早期扁平上皮癌 (pT1N0M0) の両側性同時性肺多発癌であった.慢性閉塞性換気障害を合併していたため, 手術は2期的に行った.はじめに右S6肺癌に対して中葉の温存を目的に右下葉スリーブ切除を行い, のちに左B3早期癌に対して左S1+2+S3切除を行った.両側手術後の肺機能の回復は術前に肺血流シソチグラフィーを用いて算出した予測値を上回って良好で, 術後6ヵ月を過ぎると安定し, 肺血流及び肺換気シンチグラフィーによる追跡でも左右肺に均衡のとれた分布がみられた.2年後の現在, 再発や第3癌の発生はみられていない.両側性肺多発癌の外科治療は肺機能による制約を強く受けるが, 本症例では癌の進行度および進展様式に応じた術式の工夫によって肺機能の温存と十分な局所根治性の両立が可能であった.
ISSN:0917-4141
1884-1724
DOI:10.2995/jacsurg1987.5.554