長期血液透析患者と悪性新生物発生に関する研究 臨床的および免疫学的検索

血液透析患者は,その免疫能が低下していることが以前より報告されている.一方,最近の血液透析技術の進歩により,長期透析患者の増加とともに,長期透析患者の社会復帰や,発癌性の問題が注目されるようになってきた.そこでわれわれは,血液透析患者を対象に,悪性新生物の発生頻度およびその免疫能について検索した. 504名の血液透析患者のうち18名(3.57%)に悪性新生物が発生し,この値は,一般健康人に比して明らかに高値を示した.また,免疫能に関する検索では,血液透析患者では, OKM1+細胞が有意に減少し, NK・K cellの減少が示唆された.また,患者のリンパ球は,健康人のmitogen respon...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 9; no. 3; pp. 197 - 205
Main Author 吉田, 栄一
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本臨床免疫学会 30.06.1986
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.9.197

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Summary:血液透析患者は,その免疫能が低下していることが以前より報告されている.一方,最近の血液透析技術の進歩により,長期透析患者の増加とともに,長期透析患者の社会復帰や,発癌性の問題が注目されるようになってきた.そこでわれわれは,血液透析患者を対象に,悪性新生物の発生頻度およびその免疫能について検索した. 504名の血液透析患者のうち18名(3.57%)に悪性新生物が発生し,この値は,一般健康人に比して明らかに高値を示した.また,免疫能に関する検索では,血液透析患者では, OKM1+細胞が有意に減少し, NK・K cellの減少が示唆された.また,患者のリンパ球は,健康人のmitogen responseを強く抑制し,免疫抑制活性をもつことが判明した.一方,血清中の免疫抑制物質として知られているIAPも血液透析患者では,有意に増加していた.こうした,細胞性,液性免疫能の低下が,血液透析患者における高頻度の悪性新生物発生の原因と推測された.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.9.197