多問題家族を抱える脳血管障害患者の在宅復帰 チーム医療の重要性

【はじめに】  回復期リハ病棟を担う施設にとって在宅復帰は最大の目標であり、患者・家族にとってもそれが希望であることは当然である。しかし様々な問題が生じ在宅復帰が困難な例も日々経験する。今回、患者個人の事由だけでの問題以外に様々な問題が生じたにもかかわらず自宅退院へと繋げる事が可能となった例を報告する。 【症例紹介】  42歳、女性、主婦。診断名:右被殻出血、家族構成:再婚を繰り返し前夫との子3人(16歳.14歳.13歳)・内縁の夫とその間の子2人(10歳・8歳)の7人家族で主介護者は内縁の夫。国保税未納で内縁の夫は定職なく日雇いで収入不安定。一戸建ての借家でトイレ・浴室は屋外・玄関には最大2...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 123
Main Authors 西表, 真人, 片岡, 健一, 当眞, 祐二, 石原, ミカ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2007
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2007.0.123.0

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Summary:【はじめに】  回復期リハ病棟を担う施設にとって在宅復帰は最大の目標であり、患者・家族にとってもそれが希望であることは当然である。しかし様々な問題が生じ在宅復帰が困難な例も日々経験する。今回、患者個人の事由だけでの問題以外に様々な問題が生じたにもかかわらず自宅退院へと繋げる事が可能となった例を報告する。 【症例紹介】  42歳、女性、主婦。診断名:右被殻出血、家族構成:再婚を繰り返し前夫との子3人(16歳.14歳.13歳)・内縁の夫とその間の子2人(10歳・8歳)の7人家族で主介護者は内縁の夫。国保税未納で内縁の夫は定職なく日雇いで収入不安定。一戸建ての借家でトイレ・浴室は屋外・玄関には最大25cmの段差が3段あり屋外アプローチは不補正) 【経過】  平成18年5月16日発症し救急病院搬送、保存的治療にて経過観察し6月2日当病院へリハビリ目的にて入院となる。入院時Brs左上肢1、手指1、下肢2、重度感覚障害、左空間失認・注意障害を呈しADLは全介助(BI20点)。入院時よりMSWによる経済状況(医療保険)の確認を行うも連絡困難。6月16日電話連絡にて入院費負担困難とのことで内縁の夫は退院希望されるが、現状のADLでは在宅困難と説明しリハの必要性を理解された上でリハ継続となる。7月5日生活保護決定し、7月6日回復期リハ病棟へ転床。9月12日身体障害者手帳申請(後に1級で交付)。10月17日外出訓練を行い(PT/OT/MSW/保護課ワーカー参加)住環境を把握した上でリハを継続し、住宅改修案を作成。10月23日リハビリカンファレンスにて家族へ改修案を説明。10月31日介護認定前にケアマネージャー決定し、11月18日再度家屋調査施行(事前に具体的改修箇所を確認)。11月24日介護保険認定(介護度2)。12月8日住宅改修行い退院となる。住宅改修は玄関の段差を15cmの3段と均等にし、両側に手すりを設置。屋外アプローチを補正しトイレ入り口に手すりを設置した。退院時Brs2-2-3、感覚重度、失認・注意障害は改善し四点杖・装具にて歩行・手すり使用で階段昇降監視、ADLは入浴以外自立(BI80点)となる。 【考察】  問題点は1.本人の失病(精神的不安を含む)2.不安定な経済状況・国保税未納による医療費負担困難3.複雑な家族構成(主介護者の不定)4.住環境の適応困難があり、入院1ヶ月は、早期退院も予想されたため、現状の能力での移動手段・トイレ動作の獲得を目指しアプローチを行った。しかし生保受理後は機能・環境改善の双方からの視点でリハアプローチが行え、本人・家族にとっても安心した医療の提供が可能となった。その背景には役所の保護課ワーカーを交えたチーム医療としての様々な分野からのサービスの提供・情報交換が随時行え、十分な連携が自宅退院可能へ至ったと考える。当然のことであるがチーム医療を行うことが在宅復帰を可能にする第一歩であり、必要不可欠なことである。
Bibliography:138
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2007.0.123.0