高齢者の食事への援助 施設居住老人心身の状態との栄養摂取量との実態調査から

施設居住の老人79名(平均年齢80.9歳)について,心身の一般状態の観察と3日間の栄養摂取量の調査を行った。老人は一般に病身で,心身の機能障害を合併しており,動作や運動が不自由な上に痴呆状態またはうつ状態である人が多かった。摂食機能の面では歯牙の欠損,嚥下困難などが特徴的であり,常習性便秘,食欲不振の人も多かった。エネルギー摂取量は約1300Kcalであり,加齢段階による摂取量の差はなく,男子は女子より多く摂取していた。所要量の充足率は100%の人もあるが人によっては50%ぐらいのこともあった。栄養素別の摂取量は,蛋白,脂質,ビタミンAなどは所要量の下限値を充足する程度であり,カルシウムや鉄は...

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Published in日本看護研究学会雑誌 Vol. 11; no. 3; pp. 3_57 - 3_65
Main Author 大串, 靖子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本看護研究学会 01.07.1988
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ISSN2188-3599
2189-6100
DOI10.15065/jjsnr.19880701007

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Summary:施設居住の老人79名(平均年齢80.9歳)について,心身の一般状態の観察と3日間の栄養摂取量の調査を行った。老人は一般に病身で,心身の機能障害を合併しており,動作や運動が不自由な上に痴呆状態またはうつ状態である人が多かった。摂食機能の面では歯牙の欠損,嚥下困難などが特徴的であり,常習性便秘,食欲不振の人も多かった。エネルギー摂取量は約1300Kcalであり,加齢段階による摂取量の差はなく,男子は女子より多く摂取していた。所要量の充足率は100%の人もあるが人によっては50%ぐらいのこともあった。栄養素別の摂取量は,蛋白,脂質,ビタミンAなどは所要量の下限値を充足する程度であり,カルシウムや鉄は不足であり,さらに塩分および水分の摂取量も少なめであった。心身の障害が重複したり,生活機能に直接支障となる障害(右手の麻痺,全盲)は摂食機能を低下させ,摂取する食物の種類や形態を制限し,結果的にエネルギー摂取量を少なくしていた。食欲不振の理由は,運動動作の不自由さや消化機能の低下よりも精神機能の低下や加齢による気力の衰えなどが深刻な問題として示された。高齢者の食事への援助では摂食機能の低下に対応した食物の選択,食事の援助とともに,心身機能全般の向上により自立性を回復すること,中でもうつ状態や痴呆準備状態,気力の低下などを改善することがめざさなければならない。
ISSN:2188-3599
2189-6100
DOI:10.15065/jjsnr.19880701007