研究 慢性心不全急性増悪症例の臨床所見 左室駆出率低下の有無による相違
心不全は多種多様な心疾患の結果として生じる予後不良な症候群と考えられ,急性増悪の病態は個々の症例により様々である.今回我々は,慢性心不全の急性増悪で入院した連続448例を調査し,左室駆出率低下の有無による心不全の病態の相違について検討した. 対象はこの中から弁膜症92例,原発性肺高血圧症1例,二次性肺高血圧症5例,入院時の左室駆出率が正確に測定できなかった4例を除いた346例であり,左室駆出率が50%以上の78例(EF良好群)と50%未満の268例(EF低下群)に分類して,その基礎心疾患,心症状,血中BNP値などの臨床像を比較した.年齢は両群間で有意差は認められなかったが,基礎心疾患を比較する...
Saved in:
Published in | 心臓 Vol. 36; no. 5; pp. 334 - 339 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.05.2004
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo1969.36.5_334 |
Cover
Summary: | 心不全は多種多様な心疾患の結果として生じる予後不良な症候群と考えられ,急性増悪の病態は個々の症例により様々である.今回我々は,慢性心不全の急性増悪で入院した連続448例を調査し,左室駆出率低下の有無による心不全の病態の相違について検討した. 対象はこの中から弁膜症92例,原発性肺高血圧症1例,二次性肺高血圧症5例,入院時の左室駆出率が正確に測定できなかった4例を除いた346例であり,左室駆出率が50%以上の78例(EF良好群)と50%未満の268例(EF低下群)に分類して,その基礎心疾患,心症状,血中BNP値などの臨床像を比較した.年齢は両群間で有意差は認められなかったが,基礎心疾患を比較すると,EF低下群には虚血性心疾患(56.7%)と拡張型心筋症(19.8%)が多く,EF良好群には高血圧性心不全(29.5%)が高率に存在した(p<0.0001).入院時NYHA心機能分類,血中BNP値はEF低下群が有意に高値であった(p<0.05,p<0.001).強心薬,β遮断薬の内服の使用率は,EF低下群で有意に高率であった.慢性心不全急性増悪症例を左室駆出率低下の有無により比較すると,患者背景には諸外国の報告と類似した相違があり,また,NYHA心機能分類および血中BNP値,心不全治療薬の使用頻度は,EF低下群がより高値であった. |
---|---|
ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.36.5_334 |