通所リハビリにおける主観的幸福感とセルフエフィカシーに関する検討 介護予防教室運営に向けての予備調査
【目的】 本研究の目的は高齢者が慢性期に抱える問題点を身体機能評価だけでなく、主観的幸福観や健康維持に対するモチベーションの評価、さらには行動変容ステージのセグメント化による評価の必要性を明らかにすべく、今回一般性・身体活動・バリアセルフエフィカシー(以下SE)とPGCモラールスケール(以下PGC)を検討することである。 【方法】 対象はY介護老人保健施設の通所リハビリに通われる対象者から無作為に抽出した22名(男12名、女10名;平均年齢73±12歳;年齢幅53~93歳)であった。測定パラメータは、改訂PGC、一般性SE尺度、虚弱高齢者の身体活動SE尺度、バリアSE尺度を用いた。 バリアSE...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 65 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2010
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.29.0.65.0 |
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Abstract | 【目的】 本研究の目的は高齢者が慢性期に抱える問題点を身体機能評価だけでなく、主観的幸福観や健康維持に対するモチベーションの評価、さらには行動変容ステージのセグメント化による評価の必要性を明らかにすべく、今回一般性・身体活動・バリアセルフエフィカシー(以下SE)とPGCモラールスケール(以下PGC)を検討することである。 【方法】 対象はY介護老人保健施設の通所リハビリに通われる対象者から無作為に抽出した22名(男12名、女10名;平均年齢73±12歳;年齢幅53~93歳)であった。測定パラメータは、改訂PGC、一般性SE尺度、虚弱高齢者の身体活動SE尺度、バリアSE尺度を用いた。 バリアSE尺度と各SE・PGCとの相関関係を調べた。また、片麻痺障害とその他の障害(男4・女3、計7名;男8・女7、計15名)の2群間における各パラメータの検定を実施した。2群間における年齢と性別に差はなかった。危険率5%未満で有意差ありと判定した。 【結果】 PGCと一般性SE第2因子の生活の活性化効力感に正の相関があった(γ=0.6)。バリアSEと各SEに弱い正の相関があった(γ=0.4、γ=0.3)。バリアSEとPGCは相関がなかった(γ=0.01)。2群間はいずれも有意でなかった(p=0.5)。 【考察】 通所リハビリでは、対象者の抱える問題点が複雑化しており、一概に個人が身体機能面の回復を望んでいるとは言えない状況に出会うことが少なくない。慢性期には、心理・社会的な観点もセラピストには求められる。従って、対象者が主要疾患や合併症ならびに共存症、それに伴う障害を有していることから、リハビリの目標は単に機能回復や機能向上のみに固執すると効果は得られない。 Steadらは活動的な高齢者は、定期的な運動を健康上の恩恵のためでなく、むしろ社会的な交流を楽しむために行っていることを報告している。また、高齢になるほど運動の動機付けが減少し、日々の身体活動量も実質的に減少すると指摘している。このことから、老健通所リハビリにおける身体機能に目を向けた関わりのみでは、動機付けレベルの考慮に複雑化する問題点を十分に抽出し得ないと考えられる。 今回PGCと一般性SEに相関が認められた。主観的幸福観をもたらす関わり方が身体機能にも影響するであろうことが示唆された。SEを強化することは身体活動・運動行動に変化を起こさせたり、継続させるのに有効とされる。 また、2群間によるSEが有意でなかったことから、SEは抱えている障害には影響されないと推測できる。つまり、対象者側にSEの特徴がみられなかったことから、セラピストが積極的に変容ステージ別、疾患別、集団、個人などにセグメント化する工夫が必要であると考える。 【まとめ】 1.PGCと一般性SEの相関が認められた。 2.通所利用者の疾患別によるSEに差は認められなかった。 |
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AbstractList | 【目的】 本研究の目的は高齢者が慢性期に抱える問題点を身体機能評価だけでなく、主観的幸福観や健康維持に対するモチベーションの評価、さらには行動変容ステージのセグメント化による評価の必要性を明らかにすべく、今回一般性・身体活動・バリアセルフエフィカシー(以下SE)とPGCモラールスケール(以下PGC)を検討することである。 【方法】 対象はY介護老人保健施設の通所リハビリに通われる対象者から無作為に抽出した22名(男12名、女10名;平均年齢73±12歳;年齢幅53~93歳)であった。測定パラメータは、改訂PGC、一般性SE尺度、虚弱高齢者の身体活動SE尺度、バリアSE尺度を用いた。 バリアSE尺度と各SE・PGCとの相関関係を調べた。また、片麻痺障害とその他の障害(男4・女3、計7名;男8・女7、計15名)の2群間における各パラメータの検定を実施した。2群間における年齢と性別に差はなかった。危険率5%未満で有意差ありと判定した。 【結果】 PGCと一般性SE第2因子の生活の活性化効力感に正の相関があった(γ=0.6)。バリアSEと各SEに弱い正の相関があった(γ=0.4、γ=0.3)。バリアSEとPGCは相関がなかった(γ=0.01)。2群間はいずれも有意でなかった(p=0.5)。 【考察】 通所リハビリでは、対象者の抱える問題点が複雑化しており、一概に個人が身体機能面の回復を望んでいるとは言えない状況に出会うことが少なくない。慢性期には、心理・社会的な観点もセラピストには求められる。従って、対象者が主要疾患や合併症ならびに共存症、それに伴う障害を有していることから、リハビリの目標は単に機能回復や機能向上のみに固執すると効果は得られない。 Steadらは活動的な高齢者は、定期的な運動を健康上の恩恵のためでなく、むしろ社会的な交流を楽しむために行っていることを報告している。また、高齢になるほど運動の動機付けが減少し、日々の身体活動量も実質的に減少すると指摘している。このことから、老健通所リハビリにおける身体機能に目を向けた関わりのみでは、動機付けレベルの考慮に複雑化する問題点を十分に抽出し得ないと考えられる。 今回PGCと一般性SEに相関が認められた。主観的幸福観をもたらす関わり方が身体機能にも影響するであろうことが示唆された。SEを強化することは身体活動・運動行動に変化を起こさせたり、継続させるのに有効とされる。 また、2群間によるSEが有意でなかったことから、SEは抱えている障害には影響されないと推測できる。つまり、対象者側にSEの特徴がみられなかったことから、セラピストが積極的に変容ステージ別、疾患別、集団、個人などにセグメント化する工夫が必要であると考える。 【まとめ】 1.PGCと一般性SEの相関が認められた。 2.通所利用者の疾患別によるSEに差は認められなかった。 |
Author | 村木, 敏明 有田, 真己 竹中, 晃二 渡邊, 基子 |
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Copyright | 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 |
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DOI | 10.14901/ptkanbloc.29.0.65.0 |
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