TKA術後の疼痛・可動域制限に対するミラーセラピーの効果 シングルケーススタディによる検討
【目的】強い疼痛で可動域拡大が遅れた症例を経験した。CRPStype1に対する認知的課題の効果は知られているが、急性期での適応があるかは分かっていない。この症例に対し認知的課題を行い、術後急性期での効果を検討した。【対象】60歳代女性。左変形性膝関節症、左膝蓋骨恒久性脱臼。15年前より左膝関節痛。半年前より疼痛増悪、夜間痛出現。今回左人工膝関節全置換術目的で入院。本研究は参加の同意を得て行った。【方法】シングルケーススタディ(A-B-C型)を用いて検討した。A期(術後6~12日)でROM訓練、筋力トレーニング等の一般的訓練、B期(術後13~15日)ではミラーセラピー(以下MT)、C期(術後16...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 62 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2009
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.28.0.62.0 |
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Summary: | 【目的】強い疼痛で可動域拡大が遅れた症例を経験した。CRPStype1に対する認知的課題の効果は知られているが、急性期での適応があるかは分かっていない。この症例に対し認知的課題を行い、術後急性期での効果を検討した。【対象】60歳代女性。左変形性膝関節症、左膝蓋骨恒久性脱臼。15年前より左膝関節痛。半年前より疼痛増悪、夜間痛出現。今回左人工膝関節全置換術目的で入院。本研究は参加の同意を得て行った。【方法】シングルケーススタディ(A-B-C型)を用いて検討した。A期(術後6~12日)でROM訓練、筋力トレーニング等の一般的訓練、B期(術後13~15日)ではミラーセラピー(以下MT)、C期(術後16~21日)ではMTと超音波療法(以下US)を行った。一般的訓練は各期共通して行った。MTでは5分間、鏡に映った健側下肢の鏡像の膝自動屈曲伸展運動を見て、この時安静にしている患側も同様に動かしているようにイメージする。次の5分間で、鏡を見ながら患側も同様の自動運動を健側と同期させて行った。この時、痛みの無い範囲で行うように指示した。USの設定は1MHz、1.7W/cm2で大腿部内側、外側部にそれぞれ10分間照射した。その後ROM訓練を行った。評価は疼痛をNRS、膝関節他動屈曲可動域を測定した。分析は散布図を作成し最小二乗法によりCLを描画、目視による判定を行った。また判定補助とするため測定値の比較をkruskal-wallis検定を行いpost hoc testでSteel-Dwass法を用いて解析した。介入期間中、鎮痛剤の服用、理学療法評価、治療は同じ時間に行った。【結果】NRSはCLの観察よりA期(中央値;6.5)、B期(2.5)で差を認めた。また統計的にはA期、C期(1.0)で有意差を認めた(p<0.05)。他動関節可動域はA期(平均±標準偏差;65.0±4.1°)とC期(104.0±6.5°)で有意差を認めた(p<0.05)。A期とB期(81.7±2.9°)で有意差は認められなかった。以上よりB期で疼痛軽減、C期で可動域改善を認めた。【考察】結果よりMTが疼痛軽減に有効であったと考える。C期での可動域改善はUSにより軟部組織の柔軟性が改善した事を示していると考える。術後は侵害受容性疼痛が主で炎症反応が収束するのに伴い一定期間で疼痛軽減するが、本症例のように疼痛が遷延し治療抵抗性の一因となっている場合があると考える。以上よりMTはCRPStype1だけでなく術後疼痛が遷延する症例の疼痛管理にも使用できる可能性があると考える。今後、さらなる効果の検討、適応症例の特徴、適応方法の検討が必要である。 |
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Bibliography: | 62 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.28.0.62.0 |