虚弱老人における摂食・嚥下障害に関するケアアセスメント

虚弱老人の摂食・嚥下障害のケアアセスメントを行い, その症状, 全身の生活機能ならびに口腔ケア状況について調べた. 養護老人ホームに入所している65歳以上の高齢者92名を対象とした. 摂食・嚥下障害については対象者本人による自己評価 (15項目) と介護者による他者評価 (18項目) を併用して評価した. まず, 両評価の12共通項目について統計的一致度を調べた. これらのすべての評価項目について「いいえ」と回答した者を「異常群」とし, それ以外の者を「摂食・嚥下障害リスク群」とした. また, 基本ADL, 認知機能, QOLについては, それぞれバーセル指数, 改訂長谷川式簡易知能評価スケー...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 41; no. 2; pp. 217 - 222
Main Authors 山崎, きよ子, 荒井, 由美子, 苅安, 誠, 三浦, 宏子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.03.2004
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.41.217

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Summary:虚弱老人の摂食・嚥下障害のケアアセスメントを行い, その症状, 全身の生活機能ならびに口腔ケア状況について調べた. 養護老人ホームに入所している65歳以上の高齢者92名を対象とした. 摂食・嚥下障害については対象者本人による自己評価 (15項目) と介護者による他者評価 (18項目) を併用して評価した. まず, 両評価の12共通項目について統計的一致度を調べた. これらのすべての評価項目について「いいえ」と回答した者を「異常群」とし, それ以外の者を「摂食・嚥下障害リスク群」とした. また, 基本ADL, 認知機能, QOLについては, それぞれバーセル指数, 改訂長谷川式簡易知能評価スケール, PGCモラールスケールを用いて評価した. 口腔ケアの状況は1日あたりの口腔清掃の回数と歯垢中の総嫌気性菌数・総レンサ球菌数によって評価した. 自己評価で高率に認められたのは「硬い食物の咀嚼困難」(21.74%) であった. 一方, 介護者による他者評価で高率に認められたのは「発熱」(20.65%) であった. 他者ならびに自己評価の共通項目において一致度が高かったものは「1年間の肺炎の既往」(κ値=0.85) であった. 一方, 一致度が低かったものは「食欲の低下」(κ値=0.27) であった. 主観的な要素が強い項目については, 両評価票を相補的に用いることによって的確なアセスメントができると考えられた. また, 摂食・嚥下障害のリスクの有無と全身の生活機能, 口腔ケアとの関連性を調べたところ, 有意な関連性を有していたのはバーセル指数のみであった (p<0.01). この結果より, 基本ADLが低下している者では摂食・嚥下障害のリスクが高い可能性が示唆された. また, 歯垢中の細菌数評価の結果から, 摂食・嚥下障害リスク者は口腔ケアをより徹底して行う必要性があるにも関わらず, 実際には十分になされていないこともわかった.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.41.217