上皮付着の組織学的・免疫学的特異性

<目的>歯の放出部位は生体内で唯一上皮組織層が分断されている所であり, 歯と接する上皮組織は上皮付着と呼ばれているが, その組織学的また免疫学的特徴を詳細に研究した報告は少ない. そこで, 今回6週齢のBALB/c系マウスを用いて, 下顎第1臼歯の上皮付着部を組織学的, 免疫組織学的に検索した. <方法>6週齢のBALB/c系マウスの下顎骨を摘出後, 4%パラフォルムアルデヒドで固定した. 10%EDTAで脱灰を行った後, 一部はパラフィン包埋し, H-E染色を行った. 他は凍結切片作成後, 免疫染色を行い, ICAM-1, MAdCAM-1, Gr-1, CD3e, TCRab, TCRgd...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 45; no. 5; p. 331
Main Authors 藤岡万里, 内藤貴美子, 佐々龍二, 中村雅典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 01.09.2003
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:<目的>歯の放出部位は生体内で唯一上皮組織層が分断されている所であり, 歯と接する上皮組織は上皮付着と呼ばれているが, その組織学的また免疫学的特徴を詳細に研究した報告は少ない. そこで, 今回6週齢のBALB/c系マウスを用いて, 下顎第1臼歯の上皮付着部を組織学的, 免疫組織学的に検索した. <方法>6週齢のBALB/c系マウスの下顎骨を摘出後, 4%パラフォルムアルデヒドで固定した. 10%EDTAで脱灰を行った後, 一部はパラフィン包埋し, H-E染色を行った. 他は凍結切片作成後, 免疫染色を行い, ICAM-1, MAdCAM-1, Gr-1, CD3e, TCRab, TCRgdの発現を検索した. <結果, 考察>上皮付着部位の上皮細胞並びに近接する血管内皮細胞にICAM-1の発現が認められたが, 両者ともMAdCAM-1の発現は認められなかった. H-E染色所見で多数の遊走系細胞が上皮付着内に存在することがしめされ, 免疫染色の結果からそれらの細胞はGH陽性の好中球或いはCD3陽性のTリンパ球であることが示された. 更に, TCRの検索により, 上皮付着内に存在するTリンパ球はTCRgd発現しているTリンパ球であることが示された. 以上の結果は, 上皮付着が口腔内という外界に対する生体防御機構として重要な働きをしている部位であることを強く示唆する.
ISSN:0385-0137