PGL-I抗原のらい菌種特異性について-特に妊婦血清中に現れる交差性抗体の性状について

【目的】らい菌種特異抗体検出キット, SERODIA-Leprae(富士レビオ)の使用説明書の注意事項として, 妊婦および輸血患者血清群では約10%の偽陽性が観察されるとしている. これに端を発して, 妊婦血清に関して既に鈴木定彦(1992), 川津邦雄(1994)による研究報告がなされている. この偽陽性が単に方法に由来するものか, それとも交差性抗原の刺激に依るものかを明らかにするため, 異なる方怯(MicroHA)を使用して, 改めて解析を行った. 【方怯】供試血漬:妊婦血清(主に県立宮古病院産婦人科で採取した). 比較の対照として同じエピトープを認識する, 抗3,6-OMe2-Gluc...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 69; no. 1; p. 41
Main Authors 皆川文重, 平澤博, 長尾榮治, 藤原剛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 01.03.2000
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Summary:【目的】らい菌種特異抗体検出キット, SERODIA-Leprae(富士レビオ)の使用説明書の注意事項として, 妊婦および輸血患者血清群では約10%の偽陽性が観察されるとしている. これに端を発して, 妊婦血清に関して既に鈴木定彦(1992), 川津邦雄(1994)による研究報告がなされている. この偽陽性が単に方法に由来するものか, それとも交差性抗原の刺激に依るものかを明らかにするため, 異なる方怯(MicroHA)を使用して, 改めて解析を行った. 【方怯】供試血漬:妊婦血清(主に県立宮古病院産婦人科で採取した). 比較の対照として同じエピトープを認識する, 抗3,6-OMe2-Glucose患者血清, 抗3,6-OMe2-Glucoseウサギ抗体(免疫原 NM-P-KLH)および非還元末端側糖鎖を認識するモノクローナル抗体. 性状評価:MicroHA用感作抗原としてNM-P-, NM-H-, ND-P-, NT-P-IgGを準備し, 妊婦血清中にみられる抗体との反応性を調べた. また, エピトープの化学構造を決定するため, 三糖鎖の構成部分糖をスパイクし抑制効果(MicroHA Inhibition Test)の有無を調べた. 【成績】(1)抗体レベル:抗体価は極めて低い. 陽性例の75%(9/12)は, マイクロHAでの抗体価が20倍以下と低く, MLPAやELISA法での検出感度限界に達していない. (2)陽性率:例数は充分とはいえないが, 宮古病院で採取した妊婦血清での陽性率は, 75%(12/16)と高い率を示した. その内3例(40倍2例, 80倍1例)は, MLPAやELISA法でも検出可能な高い力価を示した. (3)抗体の性状:高力価を示した上記3例を用いて, 直接MicroHA法により抗体の反応性状を調べた. 4種類の糖鎖抗原(単糖, 二糖, 三糖)を感作したいずれの粒子とも反応がみられ, 患者抗体との区別はできない. (4)エピトープ:直接凝集法, 凝集抑制法の結果から, 認識する糖鎖構造は非還元末端側の単糖, 3,6-OMe2-Glucoseである. Linkage(α-, β-)の認識については, 抗原純度の影響も重なり, 矛盾した成績が得られ検討中である. 二種が混在する可能性も考えられる. (5)経時的な変動:出産を中点として, 分娩前3回, 後2回の5連続血清について抗体価の変動を調べた. 川津らの報告の通り, この期間に特に大きな変化は観察されていない. 【考祭および結論】PGL-1抗原は, 報告されて既に15年以上が経過した. 特異抗原としては珍しく, その間, 具体的な交差性抗原の報告はなく, その菌種特異性は高く評価されている. 一方いわゆる健康者でみられる数%の陽性反応の解釈やT型患者での不応答性など, 理解に苦しむ現象も知られており, 現在もなおいくつかの問題が残されている.
ISSN:1342-3681