患者が決めた消灯時間 病棟主体から患者主体の療養生活への一歩

[研究目的] 患者から「消灯時間が早い」と不満の声が時々聞かれた。不満の理由を聞いてみると、「観たいテレビがある」、「もう少し起きていたい」、「家ではこんなに早く寝ない」など、どれも当たり前の理由が返ってきた。プライバシーを持つことの難しい環境の中、患者個々の就寝時間を消灯時間としても治療環境に影響はないか明らかにすることを目的とした。 [用語の定義] 本研究では、治療環境を「朝食遅れ、日中の眠気、入床時間、不眠、中途覚醒、問題行動、日中のレク・作業参加状況」とした。 [研究方法] 1.対象 研究の趣旨を説明し同意が得られ、アンケートに回答できた患者43名と三交代業務に従事する看護師17名を対...

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Published in日本農村医学会学術総会抄録集 p. 83
Main Author 小野, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2008
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.57.0.83.0

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Summary:[研究目的] 患者から「消灯時間が早い」と不満の声が時々聞かれた。不満の理由を聞いてみると、「観たいテレビがある」、「もう少し起きていたい」、「家ではこんなに早く寝ない」など、どれも当たり前の理由が返ってきた。プライバシーを持つことの難しい環境の中、患者個々の就寝時間を消灯時間としても治療環境に影響はないか明らかにすることを目的とした。 [用語の定義] 本研究では、治療環境を「朝食遅れ、日中の眠気、入床時間、不眠、中途覚醒、問題行動、日中のレク・作業参加状況」とした。 [研究方法] 1.対象 研究の趣旨を説明し同意が得られ、アンケートに回答できた患者43名と三交代業務に従事する看護師17名を対象とした。 2.方法 研究方法:半構成面接法を用いての聞き取り調査。 3.研究手順 _丸1_患者・スタッフを対象に消灯時間を検討するための予備調査。 _丸2_病室21時消灯、ディールーム23時消灯の実施。 _丸3_実施中の観察(朝食遅れ、日中の眠気、入床時間、不眠、中途覚醒、問題行動、日中のレク・作業参加状況)。 _丸4_実施後、患者・スタッフへのアンケート調査。 [結果]  病棟消灯時間を、希望消灯時間最長の23時にした。21時までに就寝する患者への配慮は、病室を21時に消灯することで解決できた。21時以降起きている患者への配慮はディールームと喫煙室の使用を23時にすることで解決できた。一律20時に内服していた眠前薬は、個々の就寝時間の30分~1時間前に、自ら内服に来るようになった。 また、朝食遅れ、日中の眠気、入床時間のズレ、不眠、中途覚醒はごく少数で、問題行動や苦情はなく、日中の活動量(作業・レク参加状況)は増加し、概ね治療環境への影響は認められなかった。不眠時薬の使用状況をみると、実施前に比べて62.5%減少していた。 [結論]  予備調査の段階で、21時消灯を希望した患者65%は、23時消灯後も影響されず就寝されていたと63.5%の結果より窺える。さらに問題行動や苦情と言ったトラブルがなかったことは、自分に合った就寝時間を選択できる機会を得たことで、ニードが満たされたからと考えられる。また、就寝時間と消灯時間のズレが少ないため不眠時薬の使用が減少したと考える。 以上のことより、その人本来の就寝時間に、病棟の消灯時間を合わせながら、治療環境を提供することは可能であるといえた。 今回、「消灯時間が早い」と言う一つの訴えから、患者自身によって決めた就寝時間で23時消灯となったわけであるが、患者たちがおのおのの考えで行動し,他患への迷惑行為もなく、病棟スケジュールへの逸脱行為もなく過ごしている姿から、自己決定への責任が、なされていると受け取れた。
Bibliography:1F035
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.57.0.83.0