後期高齢者肺結核症における標準治療遵守率と抗結核薬最適用量の後方視的検討

要旨 : [目的]高齢者肺結核は増加傾向にあるが, 標準治療の継続困難な症例が多い. 神奈川県立循環器呼吸器病センターにおける後期高齢者肺結核患者の標準治療継続率と逸脱例の問題点について検討した. [対象]2011年1月から2014年12月までの間に排菌陽性で当院結核病棟で治療を行った75歳以上の後期高齢者肺結核症例を対象とした. [方法]診療記録を基に, 患者背景, 画像所見, 検査所見, および転帰を後方視的に検討した. 入院期間中の標準治療遵守率, 抗結核薬の体重換算投与量別に休薬率, 副作用出現率を比較した. [結果]後期高齢者肺結核患者の入院症例は298症例であり, そのうち80歳以...

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Published in結核 Vol. 91; no. 5; pp. 495 - 502
Main Authors 千野遥, 萩原恵里, 関根朗雅, 北村英也, 馬場智尚, 篠原岳, 小松茂, 小倉高志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 15.05.2016
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ISSN0022-9776

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Summary:要旨 : [目的]高齢者肺結核は増加傾向にあるが, 標準治療の継続困難な症例が多い. 神奈川県立循環器呼吸器病センターにおける後期高齢者肺結核患者の標準治療継続率と逸脱例の問題点について検討した. [対象]2011年1月から2014年12月までの間に排菌陽性で当院結核病棟で治療を行った75歳以上の後期高齢者肺結核症例を対象とした. [方法]診療記録を基に, 患者背景, 画像所見, 検査所見, および転帰を後方視的に検討した. 入院期間中の標準治療遵守率, 抗結核薬の体重換算投与量別に休薬率, 副作用出現率を比較した. [結果]後期高齢者肺結核患者の入院症例は298症例であり, そのうち80歳以上は225例 (76%) であった. 治療導入困難が3例 (1%), 導入時より標準治療を開始できなかった症例は21例 (7%) いた. 274例 (92%) は標準治療で治療開始したが, 休薬した症例は85例 (29%), 薬剤耐性で治療変更した症例は6例 (2%) であった. 標準治療を開始および遵守できた症例は全後期高齢者のうち183例 (61%) であった. 体重換算投与量別の比較ではエタンブトールを標準用量より多く使用した群で有意に休薬率が高かった (37% vs. 21%, p=0.02). [考察]後期高齢者の結核治療では約4割の患者で標準治療を遵守できなかった. エタンブトールの過量投与に留意が必要である可能性が示唆された.
ISSN:0022-9776