動静脈瘻 (Aortocaval fistula) による著明な高拍出性心不全を呈した破裂性腹部大動脈瘤に対する緊急ステントグラフト内挿術 (EVAR) の麻酔経験

「抄録」動静脈瘻 (Aortocaval fistula : ACF) は破裂性動脈瘤の稀な合併症であり, 特異的な臨床症状を呈するが救命率は低い. 今回ACFにより高拍出性心不全を呈したため緊急ステントグラフト内挿術によるACF閉鎖の麻酔を経験したので報告する. 症例は70才, 男性. 前医で腹部大動脈切迫破裂と診断された. 当院での腹部エコーによりACFが判明, 高拍出性心不全のため肝逸脱酵素上昇と軽度肺うっ血を合併していたため緊急ステントグラフト内挿術となった. 麻酔導入によりカテコラミンの補助を必要としたが, ステント挿入により循環動態は著明に改善した. ACFの閉鎖前は高拍出性心不全...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 28; no. 1; pp. 107 - 111
Main Authors 槐島愛子, 長野真行, 井上敏, 神山拓郎, 井ノ上博法, 上野正裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2024
Online AccessGet full text
ISSN1342-9132

Cover

More Information
Summary:「抄録」動静脈瘻 (Aortocaval fistula : ACF) は破裂性動脈瘤の稀な合併症であり, 特異的な臨床症状を呈するが救命率は低い. 今回ACFにより高拍出性心不全を呈したため緊急ステントグラフト内挿術によるACF閉鎖の麻酔を経験したので報告する. 症例は70才, 男性. 前医で腹部大動脈切迫破裂と診断された. 当院での腹部エコーによりACFが判明, 高拍出性心不全のため肝逸脱酵素上昇と軽度肺うっ血を合併していたため緊急ステントグラフト内挿術となった. 麻酔導入によりカテコラミンの補助を必要としたが, ステント挿入により循環動態は著明に改善した. ACFの閉鎖前は高拍出性心不全のため循環を保つ事が困難で, 大動脈閉塞バルーンにより姑息的にACFを閉鎖してから手術を行う事もある. ACF閉鎖により即時に血圧は上昇するが, 手術後もうっ血の治療や抗凝固薬の使用など複雑な治療を行う事があり, 慎重な麻酔管理が要求される.
ISSN:1342-9132