大腿骨前捻角が膝前十字靭帯再建術後の対側損傷へ与える影響

〔要旨〕 (背景) 膝前十字靭帯再建術(Anterior Cruciate Ligament Reconstruction; 以下, ACLR)後の対側損傷の解剖学的危険因子はまだ確証されていない. 本研究はACLR後の対側損傷の解剖学的危険因子を明らかにすることを目的とした. (方法) 対象は女性アスリートで, 非接触型損傷後に初回ACLRを施行した20名40肢(片側群)および両側ACLRを施行した14名28肢(両側群)とした. 大腿骨前捻角, 顆間窩幅指数, 脛骨後方傾斜角を群間で比較した. 有意な変数において, ROC曲線を用いてカットオフ値を算出し, 対側損傷のオッズ比を求めた. (結...

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Published in日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 30; no. 2; pp. 499 - 507
Main Authors 金子雅志, 國田泰弘, 大見頼一, 栗原智久, 関大輔, 井上拓海, 井上瑞穂, 川島達宏, 星田隆彦, 栗山節郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床スポーツ医学会 30.04.2022
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ISSN1346-4159

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Summary:〔要旨〕 (背景) 膝前十字靭帯再建術(Anterior Cruciate Ligament Reconstruction; 以下, ACLR)後の対側損傷の解剖学的危険因子はまだ確証されていない. 本研究はACLR後の対側損傷の解剖学的危険因子を明らかにすることを目的とした. (方法) 対象は女性アスリートで, 非接触型損傷後に初回ACLRを施行した20名40肢(片側群)および両側ACLRを施行した14名28肢(両側群)とした. 大腿骨前捻角, 顆間窩幅指数, 脛骨後方傾斜角を群間で比較した. 有意な変数において, ROC曲線を用いてカットオフ値を算出し, 対側損傷のオッズ比を求めた. (結果) 顆間窩幅指数, 脛骨後方傾斜角は, いずれも有意差はなかった. 大腿骨前捻角は, 片側群の損傷側と両側群の初回損傷側に有意差はなかったが, 両側群の対側損傷側21.5±6.1°は片側群の非損傷側15.6±6.4°よりも有意に大きかった. 片側群の非損傷側と両側群の対側損傷側を用いたROC曲線より, 大腿骨前捻角のカットオフ値は19.3°と算出された. 19.3°以上の場合, 対側損傷のオッズ比は5.5であった. (結論) 両側群の対側損傷側の大腿骨前捻角が片側群の非損傷側よりも有意に大きく, 大腿骨前捻角がACLR後の対側損傷の解剖学的危険因子である可能性が示唆された. 対側損傷リスクの高い選手を抽出するために大腿骨前捻角を測定することは有用であると考えられた.
ISSN:1346-4159