膝前十字靱帯再建術後に競技復帰した患者における自覚的回復度に影響を与える因子
〔要旨〕我々は, 膝前十字靭帯再建術後に客観的・主観的両評価の改善が重要であることを報告してきた. 主観的評価の1つに, 点数評価による自覚的な回復度(自覚的回復度)を用いている. 我々の調査による良好な自覚的回復度は平均80点以上であり, この点数を獲得するための要因を明らかにすることが必要であると考えている. そこで本研究では, 競技復帰後の主観的評価と客観的評価の関係性をより詳細にすることを目的とした. 対象は術後に競技復帰し, 調査が行えた403例である. 目的変数に自覚的回復度が80点以上の良好群と未満の不良群の2群とした. 主観的因子に痛み, 自覚的筋力不足, 不安感の有無を, 客...
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Published in | 日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 28; no. 3; pp. 431 - 440 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床スポーツ医学会
31.08.2020
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ISSN | 1346-4159 |
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Summary: | 〔要旨〕我々は, 膝前十字靭帯再建術後に客観的・主観的両評価の改善が重要であることを報告してきた. 主観的評価の1つに, 点数評価による自覚的な回復度(自覚的回復度)を用いている. 我々の調査による良好な自覚的回復度は平均80点以上であり, この点数を獲得するための要因を明らかにすることが必要であると考えている. そこで本研究では, 競技復帰後の主観的評価と客観的評価の関係性をより詳細にすることを目的とした. 対象は術後に競技復帰し, 調査が行えた403例である. 目的変数に自覚的回復度が80点以上の良好群と未満の不良群の2群とした. 主観的因子に痛み, 自覚的筋力不足, 不安感の有無を, 客観的因子に患者背景, 患側膝伸展筋力の体重比, 脛骨前方移動量の健患差(AD健患差)などを説明変数にし, 多重ロジスティック回帰分析で検討した. さらに, 不良群内において各主観的因子を目的変数に, 客観的因子を説明変数にし, カットオフ値を算出した. 結果は, 2群間で痛み, 筋力不足, 不安感が順に選択された. 不良群では, 痛みに対してはAD健患差が選択され, カットオフ値は0.55mmであった. 筋力不足に対しては患側膝伸展筋力の体重比が選択され, カットオフ値は2.35Nm/kgであった. 競技復帰し良好な自覚的回復度を獲得するには, 痛みや筋力不足を感じにくい膝であり, それは過制動されていない, 患側膝筋力が回復した膝であることが示唆された. |
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ISSN: | 1346-4159 |