爪白癬を合併したケルスス禿瘡の2例 1996年~2008年の本邦報告例の統計的観察

今回我々は爪白癬を合併、ステロイド外用が増悪因子となったと考えられるケルスス禿瘡の2例を経験したので報告する.症例は13歳女児と、アトピー性皮膚炎および口唇ヘルペスの既往歴をもつ6歳男児.2例とも頭部に多発性の脱毛局面を認め、男児例では左耳後部と下顎に体部白癬を合併していた.病毛の真菌培養を行い、女児例ではTrichophyton rubrum、男児例ではT.mentagrophytesが発育同定された.共通項として、2例とも家族内に足白癬患者を有し、爪白癬を合併(女児例では左拇指爪甲の遠位側がケルスス禿瘡に約1年先行して白濁肥厚、男児例では左拇指爪甲の近位側に爪変形を認めた)、頭部の皮疹拡大...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 p. 117
Main Authors 福田, 知雄, 五味, 方樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2008
Online AccessGet full text
ISSN0916-4804
DOI10.11534/jsmm.52.0.117.0

Cover

More Information
Summary:今回我々は爪白癬を合併、ステロイド外用が増悪因子となったと考えられるケルスス禿瘡の2例を経験したので報告する.症例は13歳女児と、アトピー性皮膚炎および口唇ヘルペスの既往歴をもつ6歳男児.2例とも頭部に多発性の脱毛局面を認め、男児例では左耳後部と下顎に体部白癬を合併していた.病毛の真菌培養を行い、女児例ではTrichophyton rubrum、男児例ではT.mentagrophytesが発育同定された.共通項として、2例とも家族内に足白癬患者を有し、爪白癬を合併(女児例では左拇指爪甲の遠位側がケルスス禿瘡に約1年先行して白濁肥厚、男児例では左拇指爪甲の近位側に爪変形を認めた)、頭部の皮疹拡大前にステロイド外用をしていた.治療はイトラコナゾールの内服2カ月で、2例とも問題なく治癒した. ケルスス禿瘡は頭部に生じる硬毛部深在性白癬と定義される疾患であり、過去に多数の報告がみられる.主な原因菌はMicrosporum canis、M.gypceum、T.rubrum、T.mentagrophytesであるが、1960年代後半以降はペットからの感染によるM.canisの報告が増え、M.canisが本症原因菌の多数を占めるようになった.M.canisは現在なおケルスス禿瘡の原因菌の第1位であるが、近年T.tonsuransなど他菌種の報告が増えてきた感がある.そこで我々は本症の最近の傾向を掴むべく、自験例の報告に伴い、併せて1996年~2008年のケルスス禿瘡本邦報告例をまとめ、統計学的検討を行った.
Bibliography:P-074
ISSN:0916-4804
DOI:10.11534/jsmm.52.0.117.0