日本総合健診医学会 第53回大会・シンポジウム5 今、求められる女性検診とは…~乳がん検診、子宮頸がん検診のUp to Date~ 次世代の職域乳がん検診の展望:超音波やトモシンセシスを使用する“公正な”職域乳がん検診へ

日本では25年間も時代遅れのガイドラインに従って、マンモグラフィ検診が実施されてきたが、未だに乳癌死亡率の減少は証明されていない。これは、欧米のマンモグラフィ検診のエビデンスを外的妥当性の検討に日本人女性に外挿したためである。欧米のマンモグラフィ検診のエビデンスは、乳房構成が全く異なる日本人女性には直接適用できない。日本人女性は高濃度乳房の割合が高く、40歳代日本人女性のマンモグラフィ検診単独の感度は47%であり、マンモグラフィによる乳がん検診は偽陰性や過少診断の不利益が多い。日本人女性を対象とした唯一のRCT(ランダム化比較試験)であるJ-STARTは、超音波を併用することで乳がん検診の感度...

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Published in総合健診 Vol. 52; no. 3; pp. 499 - 507
Main Author 植松 孝悦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本総合健診医学会 10.05.2025
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ISSN1347-0086
1884-4103
DOI10.7143/jhep.52.499

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Summary:日本では25年間も時代遅れのガイドラインに従って、マンモグラフィ検診が実施されてきたが、未だに乳癌死亡率の減少は証明されていない。これは、欧米のマンモグラフィ検診のエビデンスを外的妥当性の検討に日本人女性に外挿したためである。欧米のマンモグラフィ検診のエビデンスは、乳房構成が全く異なる日本人女性には直接適用できない。日本人女性は高濃度乳房の割合が高く、40歳代日本人女性のマンモグラフィ検診単独の感度は47%であり、マンモグラフィによる乳がん検診は偽陰性や過少診断の不利益が多い。日本人女性を対象とした唯一のRCT(ランダム化比較試験)であるJ-STARTは、超音波を併用することで乳がん検診の感度が改善することを証明している。J-STARTは乳癌死亡率の減少効果を証明していないが、日本人女性に対する唯一のRCTであり、外的妥当性のない欧米のRCTのエビデンスを外挿するよりも重要で意義がある。 保険者が自己資金で実施する職域がん検診は、公的な検診ではなく、プライベートな任意検診として位置づけられる。職域乳がん検診の目的である被用者保険加入者と被扶養者の利益、すなわち個人の乳癌死亡リスクの低減、早期発見および早期治療による重症化予防の追求と保険者の労働力毀損防止のためには、精度の高い乳がん検診方法とモダリティを積極的に職域乳がん検診に導入することが求められる。 受診率も47%と低く、死亡率減少効果のない要因の一つであるが、日本には乳がん検診のマンモグラフィの感度や受診率を正確に把握するシステムがないので、科学的根拠に基づく正確な数値は存在しない。現行のプロセス指標は視触診併用マンモグラフィ検診のデータに基づいて制定されているので、現在推奨されているマンモグラフィ検診単独検診の指標にはなり得ず使用できない。感度(特異度)や受診率といった直接的な乳がん検診を評価できる指標を把握できる科学的根拠に基づく乳がん検診プログラム(組織型乳がん検診)の導入が必要不可欠である。 次世代の乳がん検診はこれまでの平等の乳がん検診ではなく、高濃度乳房の女性にも配慮し、乳がん検診を受ける全ての女性が最善の結果、すなわち乳癌死を回避できる、「公正な」乳がん検診プログラムを提供する必要がある。
ISSN:1347-0086
1884-4103
DOI:10.7143/jhep.52.499