術前診断が困難であった特発性分節性大網梗塞に対して腹腔鏡下手術を施行した1例

症例は14歳,女性。嘔気と右下腹部痛を主訴に近医を受診。虫垂炎疑いで抗生剤を投与されるも改善せず2日後に当院へ紹介となった。右下腹部に限局性の疼痛と筋性防御を認めた。CTでは明らかな虫垂の腫大は認めなかったが,虫垂周囲から骨盤内に限局性の低吸収域を認め,膿瘍を伴った急性虫垂炎が疑われ手術を施行した。腹腔鏡下に腹腔内を観察したところ,虫垂は軽度の発赤を認めるのみであったが,大網の右尾側が帯状に暗赤色に変色し,虫垂と癒着していた。虫垂を切除し,ポート孔から変色した大網を切除した。術後は良好に経過し第1病日に退院した。臨床病理学的に特発性分節性大網梗塞と診断した。本疾患はまれな疾患であるが,近年では...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 45; no. 5; pp. 519 - 522
Main Authors 森﨑 善久, 上野 陽介, 長谷 和生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.07.2025
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.45.519

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Summary:症例は14歳,女性。嘔気と右下腹部痛を主訴に近医を受診。虫垂炎疑いで抗生剤を投与されるも改善せず2日後に当院へ紹介となった。右下腹部に限局性の疼痛と筋性防御を認めた。CTでは明らかな虫垂の腫大は認めなかったが,虫垂周囲から骨盤内に限局性の低吸収域を認め,膿瘍を伴った急性虫垂炎が疑われ手術を施行した。腹腔鏡下に腹腔内を観察したところ,虫垂は軽度の発赤を認めるのみであったが,大網の右尾側が帯状に暗赤色に変色し,虫垂と癒着していた。虫垂を切除し,ポート孔から変色した大網を切除した。術後は良好に経過し第1病日に退院した。臨床病理学的に特発性分節性大網梗塞と診断した。本疾患はまれな疾患であるが,近年ではCT所見から術前に診断される症例が増え,保存的治療例が増えている。自験例では,本疾患の認識が不十分であったため術前診断ができなかったこと,不必要な虫垂切除を施行したことが反省点と考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.45.519