動態胸部X線撮影を利用した術前肺癌胸壁浸潤・癒着予測と術後呼吸機能予測の有用性の検討
肺癌手術において,腫瘍の胸壁浸潤や胸腔内癒着の有無は手術アプローチ・術式や術中出血などのリスクに影響するため,術前にその程度を予測できることの臨床的有用性は高い.本研究では,比較的低被曝で簡便に動画像が取得可能な動態胸部X線撮影を用い,術前の胸壁浸潤・癒着の評価,ならびに術後の呼吸機能予測における有用性を検討した. 対象は2022年1月から2023年12月までに当院で原発性肺癌手術を受けた患者295例で,術前胸壁浸潤・癒着予測群(Study1: 98例)と術後呼吸機能予測群(Study2: 31例)に分類した.Study1では,術前動態胸部X線撮影内での腫瘍の移動量を視認によりスコア化し,術中...
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Published in | 日大医学雑誌 Vol. 84; no. 4; pp. 153 - 161 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本大学医学会
01.08.2025
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Subjects | |
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ISSN | 0029-0424 1884-0779 |
DOI | 10.4264/numa.84.4_153 |
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Summary: | 肺癌手術において,腫瘍の胸壁浸潤や胸腔内癒着の有無は手術アプローチ・術式や術中出血などのリスクに影響するため,術前にその程度を予測できることの臨床的有用性は高い.本研究では,比較的低被曝で簡便に動画像が取得可能な動態胸部X線撮影を用い,術前の胸壁浸潤・癒着の評価,ならびに術後の呼吸機能予測における有用性を検討した. 対象は2022年1月から2023年12月までに当院で原発性肺癌手術を受けた患者295例で,術前胸壁浸潤・癒着予測群(Study1: 98例)と術後呼吸機能予測群(Study2: 31例)に分類した.Study1では,術前動態胸部X線撮影内での腫瘍の移動量を視認によりスコア化し,術中所見と比較した.スコア0を陽性,スコア2を陰性と定義したところ,感度84.6%,特異度95.4%,陽性的中率78.6%,陰性的中率96.9%と高い診断性能が得られた.ただしスコア1は判別困難な中間群として,評価には注意が必要とされた.腫瘍の局在による呼吸性移動量の違いも予測精度に影響する可能性がある.なおStudy1における腫瘍最大径は10.9 cmで最小径が0.8 cm,平均は3.4 cmであった.Study2では,術後1年時の横隔膜移動量と呼吸機能検査値 (VC, FEV1.0) の比との間に有意な正の相関を認め,動態胸部X線撮影が術後呼吸機能の予測指標となる可能性が示唆された.以上より,動態胸部X線撮影は,術前評価および術後モニタリングにおける簡便かつ有用な手段となり得る. |
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ISSN: | 0029-0424 1884-0779 |
DOI: | 10.4264/numa.84.4_153 |