1口蓋裂児にみられた音韻と読み書きの障害
両側唇顎口蓋裂と読み書き障害を合併した1事例について, 幼児期から20歳までの長期経過を報告した. 4歳半まで鼻咽腔閉鎖機能不全が残存したが, これが解消した後も声門破裂音が持続した. 1音1文字学習は就学前後に成立したが, 単語や文章の読み書き障害は中学時代までみられた. 特に文章の読みに関しては黙読では意味把握が困難であった. 仮名文字の読み書きに支障がなくなった中学から高校にかけて会話時の声門破裂音も消失した. アルファベットの学習には問題がみられなかったが, 英単語や漢字の学習には非常な困難を示した. これらの経過から本児の発話不明瞭および読み書き障害の原因として, (1)音韻構造の意...
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Published in | コミュニケーション障害学 Vol. 23; no. 1; pp. 57 - 62 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本コミュニケーション障害学会
30.04.2006
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ISSN | 1347-8451 |
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Summary: | 両側唇顎口蓋裂と読み書き障害を合併した1事例について, 幼児期から20歳までの長期経過を報告した. 4歳半まで鼻咽腔閉鎖機能不全が残存したが, これが解消した後も声門破裂音が持続した. 1音1文字学習は就学前後に成立したが, 単語や文章の読み書き障害は中学時代までみられた. 特に文章の読みに関しては黙読では意味把握が困難であった. 仮名文字の読み書きに支障がなくなった中学から高校にかけて会話時の声門破裂音も消失した. アルファベットの学習には問題がみられなかったが, 英単語や漢字の学習には非常な困難を示した. これらの経過から本児の発話不明瞭および読み書き障害の原因として, (1)音韻構造の意識化の遅れ, (2)語彙アクセスによる音韻的な再符号化の障害, (3)ワーキングメモリーによる音声の再符号化の問題, (4)聴覚情報処理の問題などが考えられた. |
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ISSN: | 1347-8451 |