無作為化臨床試験の被験者になることの受容性-本音と建前および未経験質問票項目に対する観念的回答を鑑みて
I「緒言」開発された新規治療法が有用であるか否かは, 前段階として試験管内実験や動物実験が行われるが, 最終的にはヒトを対象とした研究で評価されなければならない. 評価試験として信頼性の高いものとして無作為化臨床試験(randomized clinical trial:RCT)があげられる. RCTでは, 患者群を無作為に既存標準治療法適用群と新治療法適用群に振り分けるため, 患者選択におけるバイアスを取り除くことができる. 現在, 日本国内では必ずしもRCTが円滑に行われているとは言いにくく, 日本の製薬企業による欧米でのRCT外注が増加している(佐久間, 2003). 日本においてもRCT...
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Published in | 民族衛生 Vol. 72; no. 2; pp. 70 - 80 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本民族衛生学会
31.03.2006
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ISSN | 0368-9395 |
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Summary: | I「緒言」開発された新規治療法が有用であるか否かは, 前段階として試験管内実験や動物実験が行われるが, 最終的にはヒトを対象とした研究で評価されなければならない. 評価試験として信頼性の高いものとして無作為化臨床試験(randomized clinical trial:RCT)があげられる. RCTでは, 患者群を無作為に既存標準治療法適用群と新治療法適用群に振り分けるため, 患者選択におけるバイアスを取り除くことができる. 現在, 日本国内では必ずしもRCTが円滑に行われているとは言いにくく, 日本の製薬企業による欧米でのRCT外注が増加している(佐久間, 2003). 日本においてもRCTの実施が増加すれば, 日本人特有の遺伝傾向や生活習慣による特徴等を取り込むことができ, より精緻な治療に結びつけることができると考えられる. 例えば, ゲフィチニブは欧米では有用性が認められなかった(西條, 2005)が, 日本では有効な例が少なくないことが報告されている(西脇ほか, 2004). 日本において, RCTの被験者になることの受容性に関する調査はほとんど実施されたことはない. そこで, 本研究においてA大学の非医歯薬系学部とその系列校教職員を対象として, 本人あるいはその家族がRCTの被験者になることの受容性に関する質問票調査を実施することにより, RCTの受容率を記述疫学の結果として得ることをまず第一の目的とする. 日本社会は「本音と建前」の社会であると, 常識として一般に認識されている. 日本の歴史的文化的背景の下, 本音むき出しでは人間社会の運営上困難を伴うので, 本音を洗練させるために, 建前は本音の上に着る衣である(林, 2001). 本音と建前に関する研究は, 自然科学研究の対象として取扱いにくいこともあって, 医学領域の研究でほとんどそれが取り上げられたことはなかった. 質問票調査における喫煙歴のような生活習慣は, 過去から現在の実績に関する事項で, 建前の衣を着る必要はほとんどない. しかし, がん告知, RCT受容や医療不信のように, 人生観, 価値観, 利害が関与する事項では, 本音の上に建前の衣が厚く着せられていると考えるべきである. そのような領域の医学研究では, 本音と建前に関する配慮が必須である. |
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ISSN: | 0368-9395 |