消化器外科術後にvan A型バンコマイシン耐性腸球菌を分離した2症例
鹿児島大学医学部附属病院で消化器癌の術後にvanA型のバンコマイシン高度耐性腸球菌 (VRE) を分離した2症例を経験した.2例ともに切除術後に縫合不全・腸痩を形成し, 入院経過中にMRSA肺炎, 敗血症を合併した. 症例1はVREが分離されていた可能性が転院した後に気づかれ, 感染所見を認めない状態の患者の尿と便からEnterococcus faecium3株とE. faecalis1株が分離された.症例2は多臓器不全で死亡したが, 病態の悪化後に他の細菌および真菌と共にVREは分離され, 死亡前日の培養ではいずれの検体からも分離されなかったことから, 腸管内に定着していたVREが腹腔内の便...
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Published in | 環境感染 Vol. 16; no. 3; pp. 209 - 215 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
日本環境感染学会
27.08.2001
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Subjects | |
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ISSN | 0918-3337 1884-2429 |
DOI | 10.11550/jsei1986.16.209 |
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Summary: | 鹿児島大学医学部附属病院で消化器癌の術後にvanA型のバンコマイシン高度耐性腸球菌 (VRE) を分離した2症例を経験した.2例ともに切除術後に縫合不全・腸痩を形成し, 入院経過中にMRSA肺炎, 敗血症を合併した. 症例1はVREが分離されていた可能性が転院した後に気づかれ, 感染所見を認めない状態の患者の尿と便からEnterococcus faecium3株とE. faecalis1株が分離された.症例2は多臓器不全で死亡したが, 病態の悪化後に他の細菌および真菌と共にVREは分離され, 死亡前日の培養ではいずれの検体からも分離されなかったことから, 腸管内に定着していたVREが腹腔内の便汚染に伴い, 浸出液や尿からも一過性に分離されたと考えられた. また, 症例2から分離されたE.faecium4株の染色体DNAはパルスフィールド電気泳動法ですべて同じパターンを示し, 症例1から分離されたE. faeciumとは異なる株であった. 分離されたVRE株の薬剤感受性の検討ではVCMの最小発育阻止濃度 (MIC) は全株128μg/ml以上であったが, teicoplaninのE. faeciumに対する値は2または4μg/ml, ampicillinのE. faecalisに対するMIC値は1μg/mlであった. 症例1の経験後, VREを含めた高度薬剤耐性菌検出時の連絡体制を再検討したことが, 症例2を経験した際の迅速な院内感染対策に有効であった. |
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ISSN: | 0918-3337 1884-2429 |
DOI: | 10.11550/jsei1986.16.209 |