HIV感染症の治療の現状と問題点

強力な抗ウイルス剤を用いる多剤併用療法 (highly active antiretroviral therapy; HAART) が導入され, HIV感染症の臨床は大きく改善した. わが国でも1997年以降, つぎつぎと新規抗ウイルス剤が使用可能となり, 以前であれば数ヵ月の余命であったエイズを発症した症例も社会復帰できるほどとなった. しかし, 最近の研究で長期間残存する潜伏感染細胞が証明され, 現在の薬剤ではHIV感染の根治は不可能と考えられるようになった. また, 抗ウイルス剤の慢性毒性や薬剤耐性ウイルスの出現などの問題から, HAARTの長期継続も困難と考えられる症例も増加した. こ...

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Published inウイルス Vol. 53; no. 2; pp. 141 - 146
Main Author 松下, 修三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ウイルス学会 01.12.2003
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ISSN0042-6857
1884-3433
DOI10.2222/jsv.53.141

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Summary:強力な抗ウイルス剤を用いる多剤併用療法 (highly active antiretroviral therapy; HAART) が導入され, HIV感染症の臨床は大きく改善した. わが国でも1997年以降, つぎつぎと新規抗ウイルス剤が使用可能となり, 以前であれば数ヵ月の余命であったエイズを発症した症例も社会復帰できるほどとなった. しかし, 最近の研究で長期間残存する潜伏感染細胞が証明され, 現在の薬剤ではHIV感染の根治は不可能と考えられるようになった. また, 抗ウイルス剤の慢性毒性や薬剤耐性ウイルスの出現などの問題から, HAARTの長期継続も困難と考えられる症例も増加した. これらから, 最新の治療ガイドラインでは治療開始をできるだけ遅らせることにより長期間・良好なコントロール (Long-term control) を得ることを目標とするようになった. すなわち, 現在使用可能な抗ウイルス薬は, 長期使用で副作用の蓄積が見られるばかりでなく, 効果も不十分であるため, できるだけ治療開始を延期し, 治療が必要になった場合も, 使用できる抗ウイルス剤を温存するという考え方となっている.
ISSN:0042-6857
1884-3433
DOI:10.2222/jsv.53.141