転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素
要旨 本研究の目的は，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素を明らかにすることである．本研究では，納得とは「高齢がん患者が治療に対して，能動的に認知的かつ感情的に受容した状態」と定義する．研究方法は質的記述的研究デザインで、がんに対して治療を選択した現在治療過程にある65歳以上の転移のある高齢がん患者20名を対象に半構造化面接法を実施した．結果，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素として，【自分を救おうとする強い意志】【生きるための治療であるとの確信】【治療の可能性への期待】【信じて任せられる最善の治療であるとの判断】【周りへ報いたいとの希求】【治療を含めて生ききる人生の受け...
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| Published in | 日本がん看護学会誌 Vol. 30; no. 3; pp. 19 - 28 |
|---|---|
| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本がん看護学会
25.12.2016
一般社団法人 日本がん看護学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0914-6423 2189-7565 |
| DOI | 10.18906/jjscn.24 |
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| Abstract | 要旨 本研究の目的は，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素を明らかにすることである．本研究では，納得とは「高齢がん患者が治療に対して，能動的に認知的かつ感情的に受容した状態」と定義する．研究方法は質的記述的研究デザインで、がんに対して治療を選択した現在治療過程にある65歳以上の転移のある高齢がん患者20名を対象に半構造化面接法を実施した．結果，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素として，【自分を救おうとする強い意志】【生きるための治療であるとの確信】【治療の可能性への期待】【信じて任せられる最善の治療であるとの判断】【周りへ報いたいとの希求】【治療を含めて生ききる人生の受け容れ】の6つのカテゴリーが抽出された． これらの転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素の特徴として，1つは患者自身の価値が治療状況に反映していることが示唆された．2つ目として，自己の利害にとらわれずに周りの人達の気持ちを察し，それを自分の気持ちや意志として汲み取る特徴が推察できた．3つ目として，治療だけでなく，自分の人生に対するあり方や生き方も含めた今の状況に対する受け容れでもある特徴が示唆された．それは，病期が進んだ状況でのライフサイクル最終段階にある高齢者のもつ特徴が表れていた．また，これらの要素は転移のある高齢がん患者が生きてきた中で培われたものでもあり，その人の生き様や今の状況に患者がコミットできるように支援することも納得に導いていく看護となることが示唆された． |
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| AbstractList | 要 旨 本研究の目的は，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素を明らかにすることである．本研究では，納得とは「高齢がん患者が治療に対して，能動的に認知的かつ感情的に受容した状態」と定義する．研究方法は質的記述的研究デザインで、がんに対して治療を選択した現在治療過程にある65 歳以上の転移のある高齢がん患者20 名を対象に半構造化面接法を実施した．結果，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素として，【自分を救おうとする強い意志】【生きるための治療であるとの確信】【治療の可能性への期待】【信じて任せられる最善の治療であるとの判断】【周りへ報いたいとの希求】【治療を含めて生ききる人生の受け容れ】の6 つのカテゴリーが抽出された．これらの転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素の特徴として，1 つは患者自身の価値が治療状況に反映していることが示唆された．2 つ目として，自己の利害にとらわれずに周りの人達の気持ちを察し，それを自分の気持ちや意志として汲み取る特徴が推察できた．3 つ目として，治療だけでなく，自分の人生に対するあり方や生き方も含めた今の状況に対する受け容れでもある特徴が示唆された．それは，病期が進んだ状況でのライフサイクル最終段階にある高齢者のもつ特徴が表れていた．また，これらの要素は転移のある高齢がん患者が生きてきた中で培われたものでもあり，その人の生き様や今の状況に患者がコミットできるように支援することも納得に導いていく看護となることが示唆された． 要旨 本研究の目的は，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素を明らかにすることである．本研究では，納得とは「高齢がん患者が治療に対して，能動的に認知的かつ感情的に受容した状態」と定義する．研究方法は質的記述的研究デザインで、がんに対して治療を選択した現在治療過程にある65歳以上の転移のある高齢がん患者20名を対象に半構造化面接法を実施した．結果，転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素として，【自分を救おうとする強い意志】【生きるための治療であるとの確信】【治療の可能性への期待】【信じて任せられる最善の治療であるとの判断】【周りへ報いたいとの希求】【治療を含めて生ききる人生の受け容れ】の6つのカテゴリーが抽出された． これらの転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素の特徴として，1つは患者自身の価値が治療状況に反映していることが示唆された．2つ目として，自己の利害にとらわれずに周りの人達の気持ちを察し，それを自分の気持ちや意志として汲み取る特徴が推察できた．3つ目として，治療だけでなく，自分の人生に対するあり方や生き方も含めた今の状況に対する受け容れでもある特徴が示唆された．それは，病期が進んだ状況でのライフサイクル最終段階にある高齢者のもつ特徴が表れていた．また，これらの要素は転移のある高齢がん患者が生きてきた中で培われたものでもあり，その人の生き様や今の状況に患者がコミットできるように支援することも納得に導いていく看護となることが示唆された． |
| Author | 板東 孝枝 雄西 智恵美 今井 芳枝 |
| AuthorAffiliation | 徳島大学大学院医歯薬学研究部 |
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| Notes | 原著 |
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| PublicationDecade | 2010 |
| PublicationTitle | 日本がん看護学会誌 |
| PublicationTitleAlternate | 日がん看会誌 |
| PublicationYear | 2016 |
| Publisher | 日本がん看護学会 一般社団法人 日本がん看護学会 |
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| References | 21） 下仲順子．“高齢者の人格と適応”．老人・障害者の心理．福 祉士養成講座編集委員会 編．第3 版．東京，中央法規出版，2007, 54 20） 正木治恵．“老年看護の目標”．老年看護学概論．正木治恵， 真田弘美 編．第3 版．東京，南江堂，2013, 63 27） 太田喜久子．“高齢者の健康生活とは”．老年看護学．太田喜 久子 編．第1 版．東京，医歯薬出版，2013, 5 3） Bibbi Thome. The Experiences of Older People Living With Cancer. Cancer Nurs. 26（2），85―96（2003 18） Erik H. Erikson（朝長正徳，朝長梨枝子訳）．老年期．第3 版．東京，みすず書房，2000, 354 5） Osaski RE, OʼRiley K.“Leukemia”.Oncology nursing. Brown SC, Anderson C, Patterson J, et al. St. Louis, MO, Mosby, 2007, 232―257 7） 宮崎和子・小野寺綾子．がん看護・緩和ケア．第1 版．東京， 中央法規出版，2010, 10 14） 橋本すみれ．臨床決断分析入門―納得いく選択のために．レ ジデントノート．8（9），1283―1287（2006 19） 木下康仁．老人ケアの社会学．第1 版．東京，医学書院， 2002, 43 22） 谷口幸一．“高齢者と教育”．新版老年心理学．井上勝也，木 村周 編．第14 版．東京，朝倉書店，2008, 118 13） 﨑長幸恵．後悔・落胆・納得・満足の感情と原因帰属の関連 について．甲南女子大学大学院論集人間科学研究編．4, 1―9 （2006 25） 前掲19），13 9） 坂元敦子．“放射線療法”．がんサバイバーシップ．近藤まゆ み，嶺岸秀子 編著．第1 版．東京，医歯薬出版，2006, 161 17） Krippendorff（三上俊治訳）．メッセージ分析の技法―「内容 分析」への招待．第1 版．東京，勁草書房，1989 23） 長嶋紀一．“老年期の知能”．老年学．長谷川和夫，那須宗一 編．第3 版．東京，岩崎学術出版社，1977, 223 6） 板橋耕太・山本 昇．高齢がん患者の治療と治療選択の考え 方．がん看護．21（2），158―163（2016 1） 総務省統計局．高齢者の人口．2011, http://www.stat.go.jp/data/ topics/topi541.htm（参照2015―9―4 11） Blazer, D.G. “Epidemiology of late life depression”. In Diagnosis and Treatment of Depression in Late Life. Lebowittz, B. D, Pearson JL, Schneider, L. S, et al. Washington. D. C, American Psychiatric Press, 1994, 9―19 10） 坂田三允．“看護の役割”．がん患者の看護．板垣昭代．第8 版．東京，中央法規出版，2004, 33 29） 井出 訓．“ʻ老いʼの意味”．老年看護学概論．正木治恵，真 田弘美編．第3 版．東京，南江堂，2013, 16 28） 土居健郎．“老年期の死生観”．老年学．長谷川和夫，那須宗 一 編．第3 版．東京，岩崎学術出版社，1977, 271 24） Erik H. Erikson（村瀬孝雄，近藤邦夫 訳）．ライフサイクル， その完結．第11 版．東京，みすず書房，2013 4） 田村和夫．悪性腫瘍の捉え方．第2 版．東京，文光堂，2005, 279 15） 今井芳枝，雄西智恵美，板東孝枝．「納得」の概念分析．日看 科学会学術集会抄録集．34, 457（2014 2） がん情報サービス．最新がん統計．2015, http://ganjoho.jp/reg_ stat/statistics/stat/summary.html（参照2015―9―4 8） 渡邉眞理．“化学療法”．がんサバイバーシップ．近藤まゆ み，嶺岸秀子 編著．第1 版．東京，医歯薬出版，2006, 157 16） 中西睦子．インフォームドコンセントにおける理解と納得． 日保健医療行動会．13, 57―66（1998 26） 前掲22），124 12） Kurtz ME, Kurtz JC, Stommel M, et al. Physical functioning and depression among older persons with cancer. Cancer Pract. 9, 11―18（2001 |
| References_xml | – reference: 9） 坂元敦子．“放射線療法”．がんサバイバーシップ．近藤まゆ み，嶺岸秀子 編著．第1 版．東京，医歯薬出版，2006, 161 – reference: 7） 宮崎和子・小野寺綾子．がん看護・緩和ケア．第1 版．東京， 中央法規出版，2010, 10 – reference: 15） 今井芳枝，雄西智恵美，板東孝枝．「納得」の概念分析．日看 科学会学術集会抄録集．34, 457（2014） – reference: 12） Kurtz ME, Kurtz JC, Stommel M, et al. Physical functioning and depression among older persons with cancer. Cancer Pract. 9, 11―18（2001） – reference: 23） 長嶋紀一．“老年期の知能”．老年学．長谷川和夫，那須宗一 編．第3 版．東京，岩崎学術出版社，1977, 223 – reference: 22） 谷口幸一．“高齢者と教育”．新版老年心理学．井上勝也，木 村周 編．第14 版．東京，朝倉書店，2008, 118 – reference: 13） 﨑長幸恵．後悔・落胆・納得・満足の感情と原因帰属の関連 について．甲南女子大学大学院論集人間科学研究編．4, 1―9 （2006） – reference: 19） 木下康仁．老人ケアの社会学．第1 版．東京，医学書院， 2002, 43 – reference: 8） 渡邉眞理．“化学療法”．がんサバイバーシップ．近藤まゆ み，嶺岸秀子 編著．第1 版．東京，医歯薬出版，2006, 157 – reference: 5） Osaski RE, OʼRiley K.“Leukemia”.Oncology nursing. Brown SC, Anderson C, Patterson J, et al. St. Louis, MO, Mosby, 2007, 232―257 – reference: 21） 下仲順子．“高齢者の人格と適応”．老人・障害者の心理．福 祉士養成講座編集委員会 編．第3 版．東京，中央法規出版，2007, 54 – reference: 6） 板橋耕太・山本 昇．高齢がん患者の治療と治療選択の考え 方．がん看護．21（2），158―163（2016） – reference: 24） Erik H. Erikson（村瀬孝雄，近藤邦夫 訳）．ライフサイクル， その完結．第11 版．東京，みすず書房，2013 – reference: 18） Erik H. Erikson（朝長正徳，朝長梨枝子訳）．老年期．第3 版．東京，みすず書房，2000, 354 – reference: 25） 前掲19），13 – reference: 17） Krippendorff（三上俊治訳）．メッセージ分析の技法―「内容 分析」への招待．第1 版．東京，勁草書房，1989 – reference: 14） 橋本すみれ．臨床決断分析入門―納得いく選択のために．レ ジデントノート．8（9），1283―1287（2006） – reference: 20） 正木治恵．“老年看護の目標”．老年看護学概論．正木治恵， 真田弘美 編．第3 版．東京，南江堂，2013, 63 – reference: 2） がん情報サービス．最新がん統計．2015, http://ganjoho.jp/reg_ stat/statistics/stat/summary.html（参照2015―9―4） – reference: 16） 中西睦子．インフォームドコンセントにおける理解と納得． 日保健医療行動会．13, 57―66（1998） – reference: 10） 坂田三允．“看護の役割”．がん患者の看護．板垣昭代．第8 版．東京，中央法規出版，2004, 33 – reference: 26） 前掲22），124 – reference: 3） Bibbi Thome. The Experiences of Older People Living With Cancer. Cancer Nurs. 26（2），85―96（2003） – reference: 11） Blazer, D.G. “Epidemiology of late life depression”. In Diagnosis and Treatment of Depression in Late Life. Lebowittz, B. D, Pearson JL, Schneider, L. S, et al. Washington. D. C, American Psychiatric Press, 1994, 9―19 – reference: 28） 土居健郎．“老年期の死生観”．老年学．長谷川和夫，那須宗 一 編．第3 版．東京，岩崎学術出版社，1977, 271 – reference: 27） 太田喜久子．“高齢者の健康生活とは”．老年看護学．太田喜 久子 編．第1 版．東京，医歯薬出版，2013, 5 – reference: 29） 井出 訓．“ʻ老いʼの意味”．老年看護学概論．正木治恵，真 田弘美編．第3 版．東京，南江堂，2013, 16 – reference: 1） 総務省統計局．高齢者の人口．2011, http://www.stat.go.jp/data/ topics/topi541.htm（参照2015―9―4） – reference: 4） 田村和夫．悪性腫瘍の捉え方．第2 版．東京，文光堂，2005, 279 |
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| SourceID | jstage igakushoin |
| SourceType | Publisher |
| StartPage | 19 |
| SubjectTerms | coming to metastasis older cancer patients treatment process 治療過程 納得 転移 高齢がん患者 |
| Title | 転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素 |
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| ispartofPNX | 日本がん看護学会誌, 2016/12/25, Vol.30(3), pp.19-28 |
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