中年期がん患者のソーシャル・サポート・ネットワーク―手術前後のサポーターの内容と変化
要旨 がん切除手術の為に入院した中年期患者（n＝23，平均年齢52.3±7.68）を対象に，手術前から退院後3か月まで縦断的に個別面接を行い，ソーシャル・サポート・ネットワークの内容と変化を検討した．重要度を3段階に区別してサポーターを挙げてもらい，次にその人を選んだ理由を聞いた．その結果，患者は一貫して平均14.5人をサポーターとしてあげ，内容は配偶者，子ども，自分のきょうだい，その他の親族，さまざまな友人，さらに医療者など多様であった．しかも患者は，それぞれが自分にとってどのような意味があるかを識別しネットワークを構築していることが明らかになった．最も重要なサポーターには信頼と親愛の気持ち...
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| Published in | 日本看護科学会誌 Vol. 22; no. 1; pp. 33 - 43 |
|---|---|
| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本看護科学学会
31.03.2002
公益社団法人 日本看護科学学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0287-5330 2185-8888 |
| DOI | 10.5630/jans1981.22.1_33 |
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| Abstract | 要旨 がん切除手術の為に入院した中年期患者（n＝23，平均年齢52.3±7.68）を対象に，手術前から退院後3か月まで縦断的に個別面接を行い，ソーシャル・サポート・ネットワークの内容と変化を検討した．重要度を3段階に区別してサポーターを挙げてもらい，次にその人を選んだ理由を聞いた．その結果，患者は一貫して平均14.5人をサポーターとしてあげ，内容は配偶者，子ども，自分のきょうだい，その他の親族，さまざまな友人，さらに医療者など多様であった．しかも患者は，それぞれが自分にとってどのような意味があるかを識別しネットワークを構築していることが明らかになった．最も重要なサポーターには信頼と親愛の気持ちが基礎にあること，次に重要なサポーターからは情報的・道具的サポートを受けていることがわかった．また，医師や看護婦はその専門性が最も期待される治療の時期にサポーターとみなされていた．最後に，ソーシャル・サポート・ネットワークの個人差，新たなサポーターの可能性，「アンビバレントな感情」の3点について論じた． |
|---|---|
| AbstractList | 要旨 がん切除手術の為に入院した中年期患者（n＝23，平均年齢52.3±7.68）を対象に，手術前から退院後3か月まで縦断的に個別面接を行い，ソーシャル・サポート・ネットワークの内容と変化を検討した．重要度を3段階に区別してサポーターを挙げてもらい，次にその人を選んだ理由を聞いた．その結果，患者は一貫して平均14.5人をサポーターとしてあげ，内容は配偶者，子ども，自分のきょうだい，その他の親族，さまざまな友人，さらに医療者など多様であった．しかも患者は，それぞれが自分にとってどのような意味があるかを識別しネットワークを構築していることが明らかになった．最も重要なサポーターには信頼と親愛の気持ちが基礎にあること，次に重要なサポーターからは情報的・道具的サポートを受けていることがわかった．また，医師や看護婦はその専門性が最も期待される治療の時期にサポーターとみなされていた．最後に，ソーシャル・サポート・ネットワークの個人差，新たなサポーターの可能性，「アンビバレントな感情」の3点について論じた． がん切除手術の為に入院した中年期患者 (n=23, 平均年齢 52.3±7.68) を対象に, 手術前から退院後 3 カ月まで縦断的に個別面接を行い, ソーシャル・サポート・ネットワークの内容と変化を検討した. 重要度を3段階に区別してサポーターを挙げてもらい, 次にその人を選んだ理由を聞いた. その結果, 患者は一貫して平均 14.5 人をサポーターとしてあげ, 内容は配偶者, 子ども, 自分のきょうだい, その他の親族, さまざまな友人, さらに医療者など多様であった. しかも患者は, それぞれが自分にとってどのような意味があるかを識別しネットワークを構築していることが明らかになった. 最も重要なサポーターには信頼と親愛の気持ちが基礎にあること, 次に重要なサポーターからは情報的・道具的サポートを受けていることがわかった. また, 医師や看護婦はその専門性が最も期待される治療の時期にサポーターとみなされていた. 最後に, ソーシャル・サポート・ネットワークの個人差, 新たなサポーターの可能性,「アンビバレントな感情」の3点について論じた. 「要旨」がん切除手術の為に入院した中年期患者(n=23, 平均年齢52.3±7.68)を対象に, 手術前から退院後3か月まで縦断的に個別面接を行い, ソーシャル・サポート・ネットワークの内容と変化を検討した. 重要度を3段階に区別してサポーターを挙げてもらい, 次にその人を選んだ理由を聞いた. その結果, 患者は一貫して平均14.5人をサポーターとしてあげ, 内容は配偶者, 子ども, 自分のきょうだい, その他の親族, さまざまな友人, さらに医療者など多様であった. しかも患者は, それぞれが自分にとってどのような意味があるかを識別しネットワークを構築していることが明らかになった. 最も重要なサポーターには信頼と親愛の気持ちが基礎にあること, 次に重要なサポーターからは情報的・道具的サポートを受けていることがわかった. また, 医師や看護婦はその専門性が最も期待される治療の時期にサポーターとみなされていた. 最後に, ソーシャル・サポート・ネットワークの個人差, 新たなサポーターの可能性, 「アンビバレントな感情」の3点について論じた. |
| Author | 福井 里美 |
| AuthorAffiliation | 聖心女子大学大学院文学研究科 |
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| CorporateAuthor | 聖心女子大学大学院文学研究科 |
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| Notes | 研究報告 |
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| PublicationTitle | 日本看護科学会誌 |
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| References | Kahn, R L, Antonucci, T C.(1980)/遠藤利彦訳 (1993) : 生涯にわたる「コンボイ」-愛着・役割・社会的支え, 東洋・柏木恵子・高橋恵子 (編訳) 生涯発達の心理学 2 巻 気質・自己・パーソナリティ 新曜社, 33-70. Spiegel, D. Morrow, G. R., Classen, C.(1999) : Group psychotherapy for recently diagnosed breast cancer patients : A multi center feasibility study, Psycho-Oncology, 8,482-493. Wineman, N. M.(1990) : Adaptation to multiple sclerosis : The role of social support, functional disability, and perceived uncertainty, Nursing research, 39, (5), 294-299. Antonucci, T. C.(1985) : Personal characteristics, social support, and social behavior. In R. H. Binstock & E. Shanas (Eds.). Handbook of aging and the social sciences (2nd ed.), 94-128, von Nostrand Reinhold, New York. Bloom, J. R., & Spiegel, D.(1984) : The relationship of two dimensions of social support to the psychological well-being and social functioning of women with advanced breast cancer. Social Science and Medicine, 19,831-837. Reinhardt, J. P. (1996) : The importance of friendship and family support in adaptation to chronic vision impairment, Journal of Gerontology : Psychological Sciences, 51B, 5,268-278. Dakof, G. A., Taylor, S. E.(1990) : Victims'perceptions of social support : What is helpful from whom ?, Journal of Personality and Social Psychology, 58, 80-89. Casse1, J.(1976) : The Contribution of the Social Environment to Host Resistance, American Journal of Epidemiology, 104,107-123. 河合千恵子, 下仲順子 (1990) : 老人のソーシャルサポートと QOL に関する研究, 教育心理学会大32回総会抄録, 128 福井里美 (準備中) : 中年期がん患者の告知・初期治療期の適応とソーシャル・サポート・ネットワークの変化の個別性 堀毛裕子 (1994) : “ILLNESS”の意味-SD 法による疾患のイメージ分析-, 日本健康心理学会第7回大会発表論文集, 142-143 Fawzy, F. I., Fawzy, N. W., Arndt, L. A. et al.(1995) : Clinical review of psychosocial interventions in cancer care. Arch. Gen. Psychiatry, 52,100-113 福井里美・遠藤公久 (2000) : がん患者と家族のためのサポートグループの試み, 日本健康心理学会第 13 回大会発表論文集, 186-187. Fukui, S., Kamiya, M., Uchitomi, Y. et al. (2000) : Applicability of a western-developed psychosocial group intervention for Japanese patients with primary breast cancer, Psycho-Oncology, 9,167-177. 守田美奈子, 奥原秀盛, 福井里美他 (2000) : がん患者に対する地域開放型サポートグループの試み, 第13回日本サイコオンコロジー学会抄録集, 47.大木桃代 (1997) : ガンという言葉の心理的な意味, 浅野茂隆, 谷憲三朗, 大木桃代編, ガン患者ケアのための心理学, 真興交易医書出版部, 14-21. Rose, J. H.(1990) : Social support and cancer : Adult patients'desire for support from family, friends, and health professionals. American Journal of Community Psychology, 18,439-464. Edmonds, C. V. I., Lockwood, G. A., & Cunningham, A. J.(1999) : Psychological response to long term group therapy : A randomized trial with metastatic breast cancer patients, Psycho-Oncology, 8, 74-91. 福岡欣治 (1997) : ガンという言葉の社会的な意味, 浅野茂隆・大木桃代・谷憲三朗編, ガン患者ケアのための心理学, 真興交易医書出版部, 22-31. Takahashi, K., & Sakamoto, A.(2000) : Assessing social relationships in adolescents and Antonucci, T. C.(1991) : Attachment, social support, and coping with negative life events in Mature Adulthood. In Cummings, E. M., Greene, A. L., Karraker, K. H. (Eds.) LifeSpan Developmental Psychology : Perspectives on stress and coping, 261-276, Lawrence Erlbaum Associates Publishers, New Jersey. Benjamin, H. H.(1987)/竹中文良, 小島弘訳 (1999) : ウェルネス・コミュニティー がんに克つ人, 負ける人, 読売新聞社, 東京 松木光子, 三木房枝, 越村利恵ほか (1992) : 乳癌手術患者の心理的適応に関する縦断的研究 (2) -ソーシャルサポートネットワークを中心に-, 日本看護研究学会雑誌, 15 (3), 29-38. 真壁玲子 (1998) : 乳がん体験者のソーシャル・サポートと精神的・身体的状況との関連, 日本がん看護学会誌, 12 (1), 11-27. 井上まり子・高橋恵子(2000) : 小学生の対人関係の類型と適応一絵画愛情関係テスト (PART) による検討-, 教育心理学研, 48, 75-84. 浦光博 (1992) : セレクション社会心理学8, 支えあう人と人-ソーシャルサポートの社会心理学-, サイエンス社 Antonucci, T. C., Akiyama, H.(1995) : Convoys of social relations : Family and Friendships within a Life Span Context. Blieszner, R. & Bedford, V. H. (Eds.) Handbook of Aging and the Family, 355-371, Greedwood Press, Westport. Friedman, M. M.(1993) : Social support sources and psychological well-being in older woman with Heart Disease, Research in Nursing & Health, 16,405-413. Takahashi, K.(1990) : Affective relationships and their lifelong development. In Baltes, P. B., Featherman, D. L., & Lerner, R. M.(Eds.), Life-span development and behavior vol. 10, 1-27, Hillsdale, NJ : Erlbaum. 藤井達也 (1987) : 社会福祉領域におけるソーシャルサポート, 看護研究, 20,210-218 Cobb, S.(1976) : Social support as a moderator of life stress. Psychosomatic Medicine, 38,300-314 山本美香 (1995) : 術後乳がん患者における心理的適応とソーシャル・サポート, 第15回日本看護科学学会講演集, 15, 83. adults : Constructing and validating the Affective Relationships Scale. International of Behavioral Development, 24,451-463. Quinn, M. E., Fontana, A. E, Reznikoff, N. (1986) : Psychological distress in reaction to lung cancer as a function of spousal support and coping strategy, Journal of Psychosocial Oncology, 4, 79-90. Cohen, S., Wills, T. A.(1985) : Stress, Social Support, the Buffering Hypothesis, Psychological Bulletin, 98,310-357. 遠藤恵美子 (2000) : がん看護の視点からのソーシャル・サポートーその理論的裏付け-, がん看護, 5 (3), 178-181. Spiegel, D., Classen, C.(2000) : Group therapy for cancer patients-A Research-based handbook of psychosocial care, Basic Books, New York. 広瀬寛子 (1999) : がん患者のためのグループ・アプローチ, 野島一彦編現代のエスプリ 385 グループ・アプローチ, 152-162. |
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(1996) : The importance of friendship and family support in adaptation to chronic vision impairment, Journal of Gerontology : Psychological Sciences, 51B, 5,268-278. – reference: 松木光子, 三木房枝, 越村利恵ほか (1992) : 乳癌手術患者の心理的適応に関する縦断的研究 (2) -ソーシャルサポートネットワークを中心に-, 日本看護研究学会雑誌, 15 (3), 29-38. – reference: Spiegel, D. Morrow, G. R., Classen, C.(1999) : Group psychotherapy for recently diagnosed breast cancer patients : A multi center feasibility study, Psycho-Oncology, 8,482-493. – reference: Antonucci, T. C., Akiyama, H.(1995) : Convoys of social relations : Family and Friendships within a Life Span Context. Blieszner, R. & Bedford, V. H. (Eds.) Handbook of Aging and the Family, 355-371, Greedwood Press, Westport. – reference: 河合千恵子, 下仲順子 (1990) : 老人のソーシャルサポートと QOL に関する研究, 教育心理学会大32回総会抄録, 128 – reference: Cohen, S., Wills, T. A.(1985) : Stress, Social Support, the Buffering Hypothesis, Psychological Bulletin, 98,310-357. – reference: Takahashi, K., & Sakamoto, A.(2000) : Assessing social relationships in adolescents and – reference: Wineman, N. M.(1990) : Adaptation to multiple sclerosis : The role of social support, functional disability, and perceived uncertainty, Nursing research, 39, (5), 294-299. – reference: adults : Constructing and validating the Affective Relationships Scale. International of Behavioral Development, 24,451-463. – reference: 堀毛裕子 (1994) : “ILLNESS”の意味-SD 法による疾患のイメージ分析-, 日本健康心理学会第7回大会発表論文集, 142-143 – reference: Rose, J. H.(1990) : Social support and cancer : Adult patients'desire for support from family, friends, and health professionals. American Journal of Community Psychology, 18,439-464. – reference: Dakof, G. A., Taylor, S. E.(1990) : Victims'perceptions of social support : What is helpful from whom ?, Journal of Personality and Social Psychology, 58, 80-89. – reference: 福井里美 (準備中) : 中年期がん患者の告知・初期治療期の適応とソーシャル・サポート・ネットワークの変化の個別性 – reference: Spiegel, D., Classen, C.(2000) : Group therapy for cancer patients-A Research-based handbook of psychosocial care, Basic Books, New York. – reference: Antonucci, T. C.(1991) : Attachment, social support, and coping with negative life events in Mature Adulthood. In Cummings, E. M., Greene, A. L., Karraker, K. H. (Eds.) LifeSpan Developmental Psychology : Perspectives on stress and coping, 261-276, Lawrence Erlbaum Associates Publishers, New Jersey. – reference: 遠藤恵美子 (2000) : がん看護の視点からのソーシャル・サポートーその理論的裏付け-, がん看護, 5 (3), 178-181. – reference: Fawzy, F. I., Fawzy, N. W., Arndt, L. A. et al.(1995) : Clinical review of psychosocial interventions in cancer care. Arch. Gen. 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Psychosomatic Medicine, 38,300-314 – reference: 守田美奈子, 奥原秀盛, 福井里美他 (2000) : がん患者に対する地域開放型サポートグループの試み, 第13回日本サイコオンコロジー学会抄録集, 47.大木桃代 (1997) : ガンという言葉の心理的な意味, 浅野茂隆, 谷憲三朗, 大木桃代編, ガン患者ケアのための心理学, 真興交易医書出版部, 14-21. – reference: 山本美香 (1995) : 術後乳がん患者における心理的適応とソーシャル・サポート, 第15回日本看護科学学会講演集, 15, 83. – reference: 井上まり子・高橋恵子(2000) : 小学生の対人関係の類型と適応一絵画愛情関係テスト (PART) による検討-, 教育心理学研, 48, 75-84. – reference: Quinn, M. E., Fontana, A. E, Reznikoff, N. (1986) : Psychological distress in reaction to lung cancer as a function of spousal support and coping strategy, Journal of Psychosocial Oncology, 4, 79-90. – reference: Fukui, S., Kamiya, M., Uchitomi, Y. et al. (2000) : Applicability of a western-developed psychosocial group intervention for Japanese patients with primary breast cancer, Psycho-Oncology, 9,167-177. – reference: 福井里美・遠藤公久 (2000) : がん患者と家族のためのサポートグループの試み, 日本健康心理学会第 13 回大会発表論文集, 186-187. – reference: Edmonds, C. V. I., Lockwood, G. A., & Cunningham, A. 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| SourceID | medicalonline jstage igakushoin |
| SourceType | Publisher |
| StartPage | 33 |
| SubjectTerms | cancer patients middle-age social support network がん患者 ソーシャル・サポート・ネットワーク 中年期 |
| Title | 中年期がん患者のソーシャル・サポート・ネットワーク―手術前後のサポーターの内容と変化 |
| URI | https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.7005100405 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans1981/22/1/22_33/_article/-char/ja http://mol.medicalonline.jp/en/journal/download?GoodsID=eg4jaons/2002/002201/004&name=0033-0043j |
| Volume | 22 |
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| ispartofPNX | 日本看護科学会誌, 2002/03/31, Vol.22(1), pp.33-43 |
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