β3アドレナリン受容体遺伝子解析を応用した減量指導
肥満の成立には食物の摂取量，食習慣や運動量の他に遺伝素因も関与することがわかってきた。β3アドレナリン受容体遺伝子には安静時代謝量が低下する多型があり，日本人の約30%が該当する。減量指導にこの遺伝子の多型を調べ応用した。対象は職域健診でBMI (体格指数) 24以上の男女で，遺伝子検査を承諾し，生活習慣病の治療を受けていない45人 (男性39人，女性6人) とした。遺伝子多型は静脈血白血球から抽出したDNAを用いて，PCR法および制限酵素切断法により解析した。β3アドレナリン受容体の遺伝子型は変異群33人，変異あり群12人であった。保健師が各人の生活習慣や食行動を調査し，職域を巡回して，遺伝...
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| Published in | Nihon Nōson Igakkai zasshi Vol. 56; no. 2; pp. 53 - 60 |
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| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2007
日本農村医学会 |
| Subjects | |
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| Abstract | 肥満の成立には食物の摂取量，食習慣や運動量の他に遺伝素因も関与することがわかってきた。β3アドレナリン受容体遺伝子には安静時代謝量が低下する多型があり，日本人の約30%が該当する。減量指導にこの遺伝子の多型を調べ応用した。対象は職域健診でBMI (体格指数) 24以上の男女で，遺伝子検査を承諾し，生活習慣病の治療を受けていない45人 (男性39人，女性6人) とした。遺伝子多型は静脈血白血球から抽出したDNAを用いて，PCR法および制限酵素切断法により解析した。β3アドレナリン受容体の遺伝子型は変異群33人，変異あり群12人であった。保健師が各人の生活習慣や食行動を調査し，職域を巡回して，遺伝子検査結果の説明および減量のための個別指導をおこなった。指導開始から3か月後にBMIの低下した人は変異群75%，変異あり群92%で，いずれの群も指導前に比べBMIは有意に低下した。指導8か月後では変異群で57%，変異あり群では67%の人にBMIの低下が見られた。ただし，どの時点においても遺伝子の変異あり，両群間におけるBMIの変化に有意差を認めなかった。また，変異群は49%，変異あり群は75%に行動変容が認められ，約80%の人が「自分の身体に興味が持てた」や「ダイエットのきっかけになった」など遺伝子検査を受けて良かったと答えた。遺伝子解析結果を応用することで個別性のある減量指導をおこなうことができた。 |
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| AbstractList | 肥満の成立には食物の摂取量，食習慣や運動量の他に遺伝素因も関与することがわかってきた。β3アドレナリン受容体遺伝子には安静時代謝量が低下する多型があり，日本人の約30%が該当する。減量指導にこの遺伝子の多型を調べ応用した。対象は職域健診でBMI (体格指数) 24以上の男女で，遺伝子検査を承諾し，生活習慣病の治療を受けていない45人 (男性39人，女性6人) とした。遺伝子多型は静脈血白血球から抽出したDNAを用いて，PCR法および制限酵素切断法により解析した。β3アドレナリン受容体の遺伝子型は変異群33人，変異あり群12人であった。保健師が各人の生活習慣や食行動を調査し，職域を巡回して，遺伝子検査結果の説明および減量のための個別指導をおこなった。指導開始から3か月後にBMIの低下した人は変異群75%，変異あり群92%で，いずれの群も指導前に比べBMIは有意に低下した。指導8か月後では変異群で57%，変異あり群では67%の人にBMIの低下が見られた。ただし，どの時点においても遺伝子の変異あり，両群間におけるBMIの変化に有意差を認めなかった。また，変異群は49%，変異あり群は75%に行動変容が認められ，約80%の人が「自分の身体に興味が持てた」や「ダイエットのきっかけになった」など遺伝子検査を受けて良かったと答えた。遺伝子解析結果を応用することで個別性のある減量指導をおこなうことができた。 肥満の成立には食物の摂取量, 食習慣や運動量の他に遺伝素因も関与することがわかってきた. β3アドレナリン受容体遺伝子には安静時代謝量が低下する多型があり, 日本人の約30%が該当する. 減量指導にこの遺伝子の多型を調べ応用した. 対象は職域健診でBMI(体格指数)24以上の男女で, 遺伝子検査を承諾し, 生活習慣病の治療を受けていない45人(男性39人, 女性6人)とした. 遺伝子多型は静脈血白血球から抽出したDNAを用いて, PCR法および制限酵素切断法により解析した. β3アドレナリン受容体の遺伝子型は変異なし群33人, 変異あり群12人であった. 保健師が各人の生活習慣や食行動を調査し, 職域を巡回して, 遺伝子検査結果の説明および減量のための個別指導をおこなつた. 指導開始から3か月後にBMIの低下した人は変異なし群75%, 変異あり群92%で, いずれの群も指導前に比べBMIは有意に低下した. 指導8か月後では変異なし群で57%, 変異あり群では67%の人にBMIの低下が見られた. ただし, どの時点においても遺伝子の変異あり, なし両群間におけるBMIの変化に有意差を認めなかった. また, 変異なし群は49%, 変異あり群は75%に行動変容が認められ, 約80%の人が「自分の身体に興味が持てた」や「ダイエツトのきっかけになった」など遺伝子検査を受けて良かったと答えた. 遺伝子解析結果を応用することで個別性のある減量指導をおこなうことができた. 肥満の成立には食物の摂取量、食習慣や運動量の他に遺伝素因も関与することがわかってきた。β3アドレナリン受容体遺伝子には安静時代謝量が低下する多型があり、日本人の約30％が該当する。減量指導にこの遺伝子の多型を調べ応用した。対象は職域健診でBMI（体格指数）24以上の男女で、遺伝子検査を承諾し、生活習慣病の治療を受けていない45人（男性39人、女性6人）とした。遺伝子多型は静脈血白血球から抽出したDNAを用いて、PCR法および制限酵素切断法により解析した。β3アドレナリン受容体の遺伝子型は変異なし群33人、変異あり群12人であった。保健師が各人の生活習慣や食行動を調査し、職域を巡回して、遺伝子検査結果の説明および減量のための個別指導をおこなった。指導開始から3か月後にBMIの低下した人は変異なし群75％、変異あり群92％で、いずれの群も指導前に比べBMIは有意に低下した。指導8か月後では変異なし群で57％、変異あり群では67％の人にBMIの低下が見られた。ただし、どの時点においても遺伝子の変異あり、なし両群間におけるBMIの変化に有意差を認めなかった。また、変異なし群は49％、変異あり群は75％に行動変容が認められ、約80％の人が「自分の身体に興味が持てた」や「ダイエットのきっかけになった」など遺伝子検査を受けて良かったと答えた。遺伝子解析結果を応用することで個別性のある減量指導をおこなうことができた。 |
| Author | 久保, 知子 野村, 恵美 碓井, 裕史 福岡, 達仁 鎌田, 恭子 |
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| CorporateAuthor | 廣島総合病院健康管理センター 廣島総合病院臨床研究検査科 |
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| PublicationTitle | Nihon Nōson Igakkai zasshi |
| PublicationTitleAlternate | 日農医誌 |
| PublicationYear | 2007 |
| Publisher | 一般社団法人 日本農村医学会 日本農村医学会 |
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| References | 1) 国柄后子, 足達淑子. 行動療法による体重コントロールの通信指導. 肥満研究 2000; 6(3): 262-268. 5) Yoshida T, Sakane N, Umekawa T, et al. Mutation of β3-adrenergic-receptor gene and response to treatment of obesity. Lancet 1995; 346: 1433-1434. 11) 足達淑子. ライフスタイルを見直す減量指導. 東京: 法研, 1997. 9) 李 東俊, 田中喜代次, 坂根直樹, 他. 食事・運動療法とβ3-AR遺伝子多型における食行動の認知的変容. 肥満研究 2003; 9(3): 323-329. 7) 大隅和喜, 大隅まり, 吉松博信, 他. 質問表による肥満症患者の食行動異常抽出の試み. 日本肥満学会記録 1994; 14: 316-318. 10) 李 東俊, 田中喜代次, 坂根直樹, 他. β3-AR遺伝子多型における減量後の追跡調査. 肥満研究 2004; 10(1): 48-53. 2) 日本肥満学会編集委員会. 肥満・肥満症の指導マニュアル. 東京: 医歯葉出版, 2001. 4) 吉田俊秀. β3アドレナリン受容体を標的とした肥満の分子治療. 医学のあゆみ 2004; 208(5): 318-322. 6) Nagase T, Aoki A, Yamamoto M, et al. Lack of association between the Trp 64 Arg mutation in the β3-adrenergic receptor gene and obesity in Japanese men. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1997; 82: 1284-1287. 8) 李 東俊, 田中喜代次, 大蔵倫博, 他. β3-アドレナリン受容体の遺伝子多型と減量効果. Health Sciences 2003; 19(3): 203-212. 3) 福士 審, 本郷道夫. 肥満の成因と病態 食行動とその異常. 日本内科学会雑誌 1995; 84(8): 1226-1230. |
| References_xml | – reference: 9) 李 東俊, 田中喜代次, 坂根直樹, 他. 食事・運動療法とβ3-AR遺伝子多型における食行動の認知的変容. 肥満研究 2003; 9(3): 323-329. – reference: 5) Yoshida T, Sakane N, Umekawa T, et al. Mutation of β3-adrenergic-receptor gene and response to treatment of obesity. Lancet 1995; 346: 1433-1434. – reference: 3) 福士 審, 本郷道夫. 肥満の成因と病態 食行動とその異常. 日本内科学会雑誌 1995; 84(8): 1226-1230. – reference: 4) 吉田俊秀. β3アドレナリン受容体を標的とした肥満の分子治療. 医学のあゆみ 2004; 208(5): 318-322. – reference: 6) Nagase T, Aoki A, Yamamoto M, et al. Lack of association between the Trp 64 Arg mutation in the β3-adrenergic receptor gene and obesity in Japanese men. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1997; 82: 1284-1287. – reference: 1) 国柄后子, 足達淑子. 行動療法による体重コントロールの通信指導. 肥満研究 2000; 6(3): 262-268. – reference: 11) 足達淑子. ライフスタイルを見直す減量指導. 東京: 法研, 1997. – reference: 7) 大隅和喜, 大隅まり, 吉松博信, 他. 質問表による肥満症患者の食行動異常抽出の試み. 日本肥満学会記録 1994; 14: 316-318. – reference: 10) 李 東俊, 田中喜代次, 坂根直樹, 他. β3-AR遺伝子多型における減量後の追跡調査. 肥満研究 2004; 10(1): 48-53. – reference: 2) 日本肥満学会編集委員会. 肥満・肥満症の指導マニュアル. 東京: 医歯葉出版, 2001. – reference: 8) 李 東俊, 田中喜代次, 大蔵倫博, 他. β3-アドレナリン受容体の遺伝子多型と減量効果. Health Sciences 2003; 19(3): 203-212. |
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| SourceID | affrit medicalonline jstage |
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| SubjectTerms | β3アドレナリン受容体遺伝子 肥満 行動変容 |
| Title | β3アドレナリン受容体遺伝子解析を応用した減量指導 |
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