春草がカンキツ樹の窒素の肥効に及ぼす影響
草生カンキツ園における春草が, カンキツの春肥施用窒素の吸収に及ぼす影響を知るために, 8年生温州ミカンを供試し, 15N標識硫安を用いて試験を行った. 1. 春草の根は大部分が表層(0～5cm)に分布し,ミカン根は5cm以下の層に分布していた. 春先の軽い中耕と除草剤による裸地化によって, 10cmの層の地温は草生区よりも約20日早く12°Cに達したが, 表層の地温の両区の差は10cm以下の層に比較してはるかに大きかった. 2. 5月12日の刈り取り時の春草生育量は10a当たり3.23tとなり, その吸収窒素量は10.5kgで, 春肥窒素(15N)の38.6%を吸収していた. 刈り取り後敷草...
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| Published in | Engei Gakkai zasshi Vol. 54; no. 3; pp. 307 - 314 |
|---|---|
| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 園芸学会
1985
|
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0013-7626 1880-358X |
| DOI | 10.2503/jjshs.54.307 |
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| Abstract | 草生カンキツ園における春草が, カンキツの春肥施用窒素の吸収に及ぼす影響を知るために, 8年生温州ミカンを供試し, 15N標識硫安を用いて試験を行った. 1. 春草の根は大部分が表層(0～5cm)に分布し,ミカン根は5cm以下の層に分布していた. 春先の軽い中耕と除草剤による裸地化によって, 10cmの層の地温は草生区よりも約20日早く12°Cに達したが, 表層の地温の両区の差は10cm以下の層に比較してはるかに大きかった. 2. 5月12日の刈り取り時の春草生育量は10a当たり3.23tとなり, その吸収窒素量は10.5kgで, 春肥窒素(15N)の38.6%を吸収していた. 刈り取り後敷草された春草中の15Nは9月下旬までに約75%が消失し, その窒素は夏～秋季にミカン樹に再吸収された. そのため, 草生区では9月以後の葉中及び果実中の15N濃度が高まったのに対して, 裸地区では花器及び初夏の葉中の濃度が高かった. 3. 土壌の炭素及び全窒素含量は, 5月中旬に裸地区ではすでにかなり低下したが, 20cmの層の15Nは草生区よりやや高かった. 7月下旬には裸地区では15Nは顕著に低下したが, 草生区では相当量15Nは維持されていた. 4. 処理13か月後におするミカン樹の15N吸収量は,土壌残存量に比較して著しく少なく, また, 両区に差異はなかった. 土壌中の15Nは両区とも約90%が表層の腐植層に残存し, 残存率は裸地区で29.7%, 草生区で63.6%であった. 以上のように, 春草の有無によって, 春肥施用窒素のミカン樹の吸収過程及び土壌への残存量には著しい差異が生じた. |
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| AbstractList | 草生カンキツ園における春草が, カンキツの春肥施用窒素の吸収に及ぼす影響を知るために, 8年生温州ミカンを供試し, 15N標識硫安を用いて試験を行った. 1. 春草の根は大部分が表層(0～5cm)に分布し,ミカン根は5cm以下の層に分布していた. 春先の軽い中耕と除草剤による裸地化によって, 10cmの層の地温は草生区よりも約20日早く12°Cに達したが, 表層の地温の両区の差は10cm以下の層に比較してはるかに大きかった. 2. 5月12日の刈り取り時の春草生育量は10a当たり3.23tとなり, その吸収窒素量は10.5kgで, 春肥窒素(15N)の38.6%を吸収していた. 刈り取り後敷草された春草中の15Nは9月下旬までに約75%が消失し, その窒素は夏～秋季にミカン樹に再吸収された. そのため, 草生区では9月以後の葉中及び果実中の15N濃度が高まったのに対して, 裸地区では花器及び初夏の葉中の濃度が高かった. 3. 土壌の炭素及び全窒素含量は, 5月中旬に裸地区ではすでにかなり低下したが, 20cmの層の15Nは草生区よりやや高かった. 7月下旬には裸地区では15Nは顕著に低下したが, 草生区では相当量15Nは維持されていた. 4. 処理13か月後におするミカン樹の15N吸収量は,土壌残存量に比較して著しく少なく, また, 両区に差異はなかった. 土壌中の15Nは両区とも約90%が表層の腐植層に残存し, 残存率は裸地区で29.7%, 草生区で63.6%であった. 以上のように, 春草の有無によって, 春肥施用窒素のミカン樹の吸収過程及び土壌への残存量には著しい差異が生じた. |
| Author | 赤松, 聡 清水, 真寿美 高木, 信雄 |
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| Discipline | Agriculture |
| EISSN | 1880-358X |
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| PublicationDecade | 1980 |
| PublicationTitle | Engei Gakkai zasshi |
| PublicationTitleAlternate | 園学雑 |
| PublicationYear | 1985 |
| Publisher | 一般社団法人 園芸学会 |
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| References | 4. 伊藤操子. 1984. 樹園地の雑草管理の目標と今後の問題点. 雑草学会第9回夏季シンポジウム. p. 132-133. 11. 坂本辰馬•奥地進•円木忠志•船上和喜. 1965. 温州ミカン園における各種の土壌管理法の10年間の比較. 園学雑. 34: 13-21. 9. 栗山隆明•中島靖明•下大迫三徳•吉田 守. 1977. カンキツ園の土壌管理に関する研究. 第2報. 土壌管理法(深耕, 中耕, マルチ)が木の生育ならびに収量, 根群分布, 土壌硬度におよぼす影響. 園学要旨. 昭52春: 130-131. 3. 広瀬和栄. 1971. 果樹園用除草剤について. 植物の化学調節. 6: 33-51. 15. 高木信雄•赤松, 聡•大和田厚•清水真寿美. 1983. 宮内伊予柑の栄養条件と施肥改善に関する研究. 第2報. 落花と摘花による窒素の消費量と花肥の効果, 園学要旨. 昭58秋: 24-25. 13. 鈴木邦彦. 1984. 果樹園における雑草の生態と管理. 第9回雑草学会夏季シンポジウム p. 1-24. 7. JONES, W. W., C. B. CREE and T. W. EMBLETON. 1961. Some effects of nitrogen sources and cultural practices on water intake by soil in a Washington navel orange orchard and on fruit production, size, and quality. Proc. Amer. Soc. Hort. Sci. 77: 146-154. 12. 佐藤雄夫•佐々木生雄. 1980. リンゴ園の窒素施肥に関する研究. 第2報. リンゴ樹の窒素吸収に対する草生および敷草の影響. 福島果試報. 10: 23-33. 1. 藤井英雄•前田道義. 1981. 温州ミカン園の土壌管理法比較試験. 農水省果樹試編. 常緑果樹試験研究打合会議資料(土壌肥料): 15-20. 17. 渡辺登志彦. 1968. 瀬戸内カンキツ園の土壌管理に関する研究. 第1報. 各種土壌管理法が土壌の理化学性およびカンキツの発育, 収量におよぼす影響. 広島果試報. 28: 1-36. 5. 市来小太郎•山下義昭. 1976. 草生ミカン園における施肥窒素の動態. 第2報. 草に吸収される窒素とその分解について. 土肥学要旨. 22(II): 89 16. 吉村不二男•葛西暁男•浜田光暉•徳田 裕. 1960. カンキツ類の台木に関する研究. 第3報. 地温と実生の生育. 園学雑. 29: 107-113. 14. 高橋健二•坂井義春•原田豊•広瀬和栄. 1978. 温州ミカン園におけるプロマシル除草剤の連年使用の影響に関する研究. 第3報. ミカンの生育, 収量ならびに果実品質に及ぼす影響. 雑草研究. 23: 85-89. 8. 加藤忠司. 1974. アンモニウム塩, 硝酸塩. アミド態窒素, アミノ酸および全窒素に含まれる重窒素の測定について. 四国農試報. 28: 151-157. 10. 中原美智男•岩切徹•渋谷政夫•小山雄生•西垣晋. 1985. アイソトープ15N利用によるウンシュウミカン成木樹のチッソ施肥法改善に関する研究. 佐賀県果試特別報. 3: 62-87. 6. 岩本数人. 1980. 千葉勉編著果樹園の土壌管理と施肥技術: 77-78. 博友社. 東京. 2. 広部誠•大垣智昭. 1969. 温州ミカンの養分吸収に関する調査. 第2報. 成木樹の時期別養分吸収について. 神奈川園試研報. 17: 18-26. |
| References_xml | – reference: 3. 広瀬和栄. 1971. 果樹園用除草剤について. 植物の化学調節. 6: 33-51. – reference: 13. 鈴木邦彦. 1984. 果樹園における雑草の生態と管理. 第9回雑草学会夏季シンポジウム p. 1-24. – reference: 4. 伊藤操子. 1984. 樹園地の雑草管理の目標と今後の問題点. 雑草学会第9回夏季シンポジウム. p. 132-133. – reference: 6. 岩本数人. 1980. 千葉勉編著果樹園の土壌管理と施肥技術: 77-78. 博友社. 東京. – reference: 10. 中原美智男•岩切徹•渋谷政夫•小山雄生•西垣晋. 1985. アイソトープ15N利用によるウンシュウミカン成木樹のチッソ施肥法改善に関する研究. 佐賀県果試特別報. 3: 62-87. – reference: 14. 高橋健二•坂井義春•原田豊•広瀬和栄. 1978. 温州ミカン園におけるプロマシル除草剤の連年使用の影響に関する研究. 第3報. ミカンの生育, 収量ならびに果実品質に及ぼす影響. 雑草研究. 23: 85-89. – reference: 17. 渡辺登志彦. 1968. 瀬戸内カンキツ園の土壌管理に関する研究. 第1報. 各種土壌管理法が土壌の理化学性およびカンキツの発育, 収量におよぼす影響. 広島果試報. 28: 1-36. – reference: 16. 吉村不二男•葛西暁男•浜田光暉•徳田 裕. 1960. カンキツ類の台木に関する研究. 第3報. 地温と実生の生育. 園学雑. 29: 107-113. – reference: 5. 市来小太郎•山下義昭. 1976. 草生ミカン園における施肥窒素の動態. 第2報. 草に吸収される窒素とその分解について. 土肥学要旨. 22(II): 89 – reference: 8. 加藤忠司. 1974. アンモニウム塩, 硝酸塩. アミド態窒素, アミノ酸および全窒素に含まれる重窒素の測定について. 四国農試報. 28: 151-157. – reference: 1. 藤井英雄•前田道義. 1981. 温州ミカン園の土壌管理法比較試験. 農水省果樹試編. 常緑果樹試験研究打合会議資料(土壌肥料): 15-20. – reference: 11. 坂本辰馬•奥地進•円木忠志•船上和喜. 1965. 温州ミカン園における各種の土壌管理法の10年間の比較. 園学雑. 34: 13-21. – reference: 7. JONES, W. W., C. B. CREE and T. W. EMBLETON. 1961. Some effects of nitrogen sources and cultural practices on water intake by soil in a Washington navel orange orchard and on fruit production, size, and quality. Proc. Amer. Soc. Hort. Sci. 77: 146-154. – reference: 9. 栗山隆明•中島靖明•下大迫三徳•吉田 守. 1977. カンキツ園の土壌管理に関する研究. 第2報. 土壌管理法(深耕, 中耕, マルチ)が木の生育ならびに収量, 根群分布, 土壌硬度におよぼす影響. 園学要旨. 昭52春: 130-131. – reference: 15. 高木信雄•赤松, 聡•大和田厚•清水真寿美. 1983. 宮内伊予柑の栄養条件と施肥改善に関する研究. 第2報. 落花と摘花による窒素の消費量と花肥の効果, 園学要旨. 昭58秋: 24-25. – reference: 2. 広部誠•大垣智昭. 1969. 温州ミカンの養分吸収に関する調査. 第2報. 成木樹の時期別養分吸収について. 神奈川園試研報. 17: 18-26. – reference: 12. 佐藤雄夫•佐々木生雄. 1980. リンゴ園の窒素施肥に関する研究. 第2報. リンゴ樹の窒素吸収に対する草生および敷草の影響. 福島果試報. 10: 23-33. |
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| SourceType | Open Access Repository Publisher |
| StartPage | 307 |
| Title | 春草がカンキツ樹の窒素の肥効に及ぼす影響 |
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| ispartofPNX | 園芸学会雑誌, 1985, Vol.54(3), pp.307-314 |
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